バブみ道日丿宮組

お題:昼間の空 制限時間:15分

 ここで空を見上げるのは習慣だった。

「……」

 立入禁止の屋上エリア。

 太陽発電のパネルが大量に並べてる中にあるふとした隙間。

 そこが私の場所だった。

 教室でご飯を食べれない私の唯一の場所。

「……ふぅ」

 別にいじめられてるわけじゃないし、誘われないわけでもない。

 ただ誰かとご飯を食べるというのが嫌だった。

 

 ーー思い出す。

 

 お姉さまと慕ってくれた妹の姿を。

 あの娘は私とご飯を食べるのがとても好きだった。入院してからはそれができなくなって、不満そうだった。おやつとして持ってきたスイーツを一緒に食べるのが毎週の楽しみだといってた。

 妹の病気が病気であったため、病室に好き好んで入ることができなかった。それも不満そうだった。『わたしは病気だけど、元気がないわけじゃないから』

 日に日に弱ってく妹はよくそんなことを言ってた。

 

 そうして、この学校の入学試験が始まった日。

 

 妹は死んだ。

 眠るように死んだという。

 両親は受験に影響がでるからと、試験が終わるまで連絡をくれなかった。

 悔やんだ。

 妹が旅立つときにいられなかったことに。

「……はぁ」

 いつまでも後悔の念が混じる。

 私がいて、何かができるというわけでもない。呼吸しなくなる瞬間を目にするだけで、助けにならないのはわかってる。

 でも……何かをしてあげることができたなら、私は迷わずそうしてただろう。意識がなくても、きっと側にいてほしかったはずだ。

「……」

 だから、毎日空を見上げる。

 妹が見るはずであった世界の美しさを、いつまでも眺めてる。

 いつか同じ場所に旅立つときに、このどこまでも続いてるかわからない空について語りたいから。

「……ん」

 メールがスマホに届いてた。

 たまには家に帰ってきなさいという短い文章。

 寮ぐらしにした私は、一年に一度帰るか帰らないかの生活をしてる。

 親とは必然的にご飯を食べることになるので、距離をとってた。

 思い出さないってことはないから。忘れたいってことでもない。

 ただどう親と距離を詰めたらいいのかわからなくなっただけなのだから。

 

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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