第79話今思えばおかしな話
◆
俺はあれからも無い頭で必死に考えた。
そもそも何故こんな事になったのかと思い返せば全て俺が原因である事が分かる。
今までは皇族であり、さらに皇位継承権一位という地位もあり、それは俺が優れているからであると、なんの根拠もないのにそう疑いもせず思っていた。
俺が優れているから、俺は皇位継承権一位なんだと、そう思っていたし、その優れた俺が思いつく事や考える事は全て正しく、異を唱えるものは間違ってるとさえ思った。
地下牢で謹慎されるまではその事を面と向かって他人に言ったことはないのだが、態度では隠そうともしていなかった為、間違いなく俺がどう思っているかなど丸わかりであっただろう。
なんと愚かな事かと今ならば思うが、あの頃の俺はそれが最善であると本気で思っていたし、態度で示してやるだけありがたいと思えとすら思っていた。
そんな俺だからこそ、俺はマリーが苦手だったのである。
マリーは優秀である。
その事は婚約が決まり最初の顔見せの時、お互いに初めて会ったその時から俺はマリーが優秀であると子供心ながら理解したのだが、同時にその事を受け入れられなかった。
この世界で一番優秀なのは弟でもマリーでもなくこの俺だと本気で思っていたのだが、だからと言って優秀となるべく為に必要な努力は一切してこなかった。
何故ならば俺は優秀だからそんな事はしなくても大丈夫だと思っていたからである。
そしてその傲慢さと無駄に肥大したプライドを常に皇帝陛下である俺の父上から指摘されていたのだが俺は聞く耳すら持たないどころか『お父様はやはり頭が弱い』とすら思ってしまう程であった。
しかしマリーは違った。
毎日、今できる限りの努力をしていたのだ。
それは一日数時間程度であり、一日四時間にも満たない事は良くあったらしいのだが、俺はそれをサボっているのだからマリーは腑抜けている、だらしない女であると本気で思っていた。
けれども彼女は俺の婚約者という地位を守るために必死だったのだと今ならば彼女の体調とかを鑑みれば分かる。
一体何故彼女をここまで突き動かしたのかというのは未だに分からないのだが、他人には厳しい俺は常にいい加減に授業を受け、聞き流していた。
そんな俺が優秀になれるわけもなく、そしてマリーは当然真剣に取り組んでいる分、俺とマリーの差は広がり続け、広がるたびに俺はマリーの事が嫌いになった。
婚約者であり女性であるのならば下手に出るのが当然であるとすら思った。
今思えばおかしな話である。
マリーが優秀であるように、人の優秀さ等男と女で変わる事などありえないというのに。
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