第66話今一度考えてみる

「もう、子ども扱いしないでくださいましっ!」


 そう言うとウィリアムは撫でるのを止めてくれるのだが、だからと言って降ろしてくれるわけでもなく再度お姫様抱っこへと抱えなおす。


「はいはい。まったく我儘なご主人様だな」

「そっ、それはウィリアムのせいでしょうっ!!」

「はっはっはっ、それだけ元気があれば当分は大丈夫そうだなっ」

「そう、大丈夫なついでに降ろしてくださいましっ!」


 何回されてもお姫様抱っこというのは馴れず、今なお心臓がどうにかなってしまいそうなのだからいい加減降ろしてもらいたい限りである。


 そもそも恥ずかしい。


 こんな所を家人の誰かに見られていたらと思うと恥ずかしすぎて死んでしまいそうなくらいには恥ずかしいという事をウィリアムにはぜひとも分かって頂きたいものである。


「歩くだけで死にかねない身体で何をいっているんだか。 当然マリーを降ろす事は断る」

「えぇいっ! ご主人様のいう事を聞けないのですのっ!?」

「ご主人様をお守りするのが騎士の役目でございます」


 これではまるでペットの小型犬を抱きかかえながら散歩しているのと何が違うというのか。


 そしてこの場合のペットはわたくしではないか。


 恐らくウィリアムはわたくしの事をペットか何かだと思っているに違いない。


 きっとそうである。


 そうでなければ年頃の男性が年頃で美しく可憐なわたくしを抱えて表情一つ崩さずに対応できるはずがない。


 普通であれば顔を真っ赤にして照れながらもなんとか抱きかかえているはずである。


 このわたくしペット扱いなど言語道断。


 子ども扱いにペット扱い。 あぁ、こいつとは一生仲良くなれない。


 そんな事を思いながら久しぶりに散策した我が家の庭は何だかんだで美しく、そして何だかんだで思い返せば久しぶりに心から楽しいと思える時間であった。


 癪ではあるのだが、わたくしは大人なので認めるところは認める広い心を持ちあわえているのだ。


 どっかのウィリアムとは訳が違うし頭の出来も違うのだ。


 そんな事を思いながら我が屋敷に戻ると何だか生暖かい視線で見つめて来る使用人とお父様、そしてお母様が出迎えてくれるのであった。





 何故俺はまた幽閉されているのか。


 そもそも俺はマリーの悪事を暴き白日の下に晒そうとしただけである。


 それが気が付けば俺は学園を退学させられ、そして皇位継承権も剥奪され、そしてまた幽閉をされている。


 納得がいくはずがないのだが、ここで何も考えず動けばどうなるか、今回の一件で痛いほど思い知った為、前回の反省も含めて今一度考えてみる。

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