第64話黙っていれば息が詰まる程のイケメン
ホント、さすがメイン攻略キャラクターの一人なだけはあって黙っていれば息が詰まる程のイケメンである。
そしてそれがまた腹立たしく思えて来るのだから、こんな奴に愛だの恋だので浮かれているのだとお父様に勘違いされてしまうのは分からないでもないのだが、それと同時にやはり腹立たしくもあり複雑な気分である。
コイツわたくしをいじめた側で、わたくしはコイツにいじめられた側なのだ。 その大前提を忘れるなどあり得ない。
「どうした? 俺の顔に何かついているか?」
「いえ何も。 それで、あなたは実家に帰らなくてもよろしいのですか? これでも一応貴族家長男でしょう?」
「ああ、その事なら心配しなくても良い。 そもそもあの婚約破棄の一件以降ほぼ絶縁状態に近かったし、そこにダメ押しのマリーの騎士になった発言で完全に縁を切られたと言っても過言ではないからな。 いじめ加害者であったはずの俺がある日突然いじめてた相手の騎士になったと言って帰って来たんだ。 バカ息子のせいで要らぬ火の粉をこれ以上かかりたくないと絶縁するのは当然だろう。 俺が父親の立場であっても同じように絶縁しただろうな」
そう言うウィリアムはどことなくスッキリしているように思えた。
「何故そんなに他人事の様に話すんですの? 家族と縁を切られる事は、そも貴族であるウィリアムにとっては、わたくしが言うのもなんですがそれこそ令嬢一人をいじめたくらいでは厳しすぎるのではございませんか?ウィリアムさえ宜しければわたくしが一筆書いて縁を戻すように手紙送っても──」
「──その必要は無い。 むしろ俺は今の状態の方が良いとさえ思っている。 あの環境、貴族たれ、国の騎士たれというのは、俺には息苦しかったんだと思う。 だからその捌け口にマリーを悪だと決めつけ、正義の名の元に行う断罪に酔いしれてしまったのだろう。 言い訳にもならないが、そんな家の重圧に耐えられないような弱い奴が、また家に戻れたとしても同じことを繰り返すかもしれないという新たな重圧を背負って生きると言うのは、俺はきっと自分を律し続ける事は出来ずにまた同じことを繰り返していただろうしな」
「きゃぁっ!? い、いきなり何ですのっ!? ひゃぁぁあああっ!!!」
そしてウィリアムはわたくしの両脇に手を入れるとそのまま持ち上げてくるくると回りだす。
「それに、今の生活ではこんな事をしても誰も俺を注意してこない。 以前であればこんなところを家の誰かに見られたらこっ酷く怒られたものだ。 遊んでいないで鍛錬をしろ。 鍛錬鍛錬、親の口からでる言葉はそればかりだ」
わたくしを担ぎ、周り終えたウィリアムはそのままわたくしをお姫様抱っこをして悪戯が成功したような表情でわたくしの顔を覗いて来るではないか。
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