第52話国家転覆を企てた大罪
常に自信を持っており、自らが先ず動き家臣へ見せるその姿はまさにこの帝国を先導する皇帝そのものであった。
またカイザル殿下は民にも優しく、分け隔てなく接するそのお姿はその器の大きさを物語っているようだとさえ思った。
だからこそ皆カイザル殿下にひかれ、そしてカイザル殿下の元に巷では聖女と呼ばれている光魔術使いのスフィア様が惹かれあうのは自然な流れであると誰しもがそう思った。
しかしその中でただ一人それを良しと思わない人物、カイザル殿下の元婚約者であったマリー・ゴールドが実家の権力を盾にスフィア様へ日々嫌がらせを始めたのだ。
はじめこそ小言程度であったのだが、最後の方には池に落とされたりと嫌がらせの内容が日を増すごとに酷くなり、ついにカイザル殿下が婚約破棄を皆がいる前で宣言したという。
その時私は既に他国へ視察にいっており、その姿こそ見る事は出来なかったのだがきっと皇帝然とした立派なお姿であったであろと、その雄姿を目を瞑れば鮮明に思う浮かべる事が出来た。
そしてマリー・ゴールドはカイザル殿下の婚約者から外され、代わりにスフィア様が婚約者へ、そしてより一層明るい未来へと進んでいくのだろうと、そう思っていた。
しかしながら視察が終わり帝国へと帰ってきて見れば私が思い描いていた未来とは異なり、カイザル殿下はマリー・ゴールドを婚約破棄したとして僻地へ幽閉されたと言うではないか。
そして、とくに私を驚かせたのがウィリアムである。
以前の彼であればこのような不正ないし不当な扱いを良しとせず自らの地位を投げうってでもカイザル殿下の側でお守りしているはずである。
にも関わらずあれ程嫌っていたマリー・ゴールドへ自らの剣を捧げ、マリー・ゴールドの騎士となったというではないか。
初めは嘘だと思っていたのだが、学園内で、それも数多の野次馬たちがいる中で行ったとなればウィリアムはマリー・ゴールドの騎士となったのであろう。
普通に考えてそんな事などあり得ない。
であればなぜか。
そう思った時俺は一つの答えにたどり着く。
それはマリー・ゴールドが長きにわたりウィリアム、そして皇帝陛下に洗脳魔法を少しずづかけて行ったのだろう。
であれば今まで起きた出来事、ウィリアムがマリー・ゴールドの騎士となった事、そして皇帝陛下がカイザル殿下を見捨てた事、それら全てがつじつまが合うではないか。
これはまさに国家転覆を企てた大罪であろう。
まさに毒婦であり悪魔に魂を売った魔女ではないか。
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