第6話必ずしもゲーム通りに展開するとは言い切れない
そう思うと悔しくて仕方が無い。
しかし、とわたくしは思う。
カイザル殿下には皇位継承権を持つ歳の近い次男が存在する。
だからこそカイザル殿下の皇位継承を盤石なものとするために公爵家であり、魔力が高すぎるがゆえに魔力欠乏症となってしまったわたくしと早期に婚約させたのではなかったのかと。
幼いころはその事については何も思わなかったのだが今なら十分に理解できている。
それ故に今カイザル殿下がわたくしと、しかも婚約相手であるわたくしを貶めるようなやり方で婚約破棄をした場合起こりえる展開も当然少し考えれば予測できるというものである。
間違いなく皇位継承順位は弟と入れ替わる。
だからこそゲームでのカイザル編では皇帝に成れるほどの実績を積んでいかなければバッドエンドとなるのだ。
しかし、それは言い換えればわたくしが婚約破棄も致し方なしという悪女であるという前提があってこそ。
ゲーム内でのわたくしは婚約破棄をされた時、酷い癇癪を起し暴れまわった挙句、最終的に気絶した為、周囲はわたくしの事を怒りで我を忘れた挙句頭に血が上り気絶した、妃としてはあまりにも相応しくない、淑女として到底受け入れられない程の存在として受け取られ、この婚約者でよく今まで文句も言わずに堪えて来たと逆に称賛する者たちまで現れる始末であった。
ゲームを実際にプレイしていた私もそう思っていたのだが、実際にマリー・ゴールドとして転生してみて、そりゃ死刑宣告も同じ事を最悪な形で宣言されるのだから発狂もするだろうし、今まで溜まった鬱憤も爆発して、この身体では受け止めきれずに気絶してしまうだろう。
そして思う。
わたくしに対してそんな事をした相手が皇帝となり、子供も産まれ、幸せに暮らす。
その様な事、許すはずがない。
それでも、とわたくしは思う。
これはあくまでもゲームの話であり、今までゲームのストーリー通り現実も進んでいたとしても、今わたくしがいるこの場はゲームではなく現実なのだ。
必ずしもゲーム通りに展開するとは言い切れない。
何故ならば、わたくし自身がゲームとは違う展開も起こりえるという最たる証拠ではないか。
だから、もし、万が一の確率でわたくしは婚約破棄をされないという可能性だってあるはずで、そのあるかどうかも分からない確率にしがみつきたくなる位にはわたくしはカイザル殿下の事が好きだったのだ。
何故過去形かというと、今パーティー会場についたわたくしの目の前で、怒りを隠そうともせず、蔑むような目線でにらんでくるカイザル殿下がスフィア・エドワーズを伴って近づいて来たからである。
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