第4話私だってそう思う

 だが今となっては全て過去の事である。


 間違いなく今日が最後のパーティーであり、そして私の人生で最も最悪な日となるのだから。


 なんで普通に婚約破棄をしてくれないのか。


 ちゃんと規則に則り正しい方法でもって婚約破棄をしてくれたのならば、このパーティーも楽しめたはずなのに。


 カイザル殿下は今日、私の生きる意味も、そして唯一の楽しみまでも奪い去ると同時に、唯一の楽しみは最も嫌な事の一つへと変わってしまうだろう。


 あんな婚約破棄をされたのならば、無いとは思うのだがもしパーティーへと誘われた所で針の筵となることは目に見えている。


 そんな状態で以前の様にパーティーを楽しむことなど出来るはずがない。


 だから、今日で全て無くなるのだ。


 そして原作では生きる意味も生きていく楽しみも無くなった私は自殺をしたのだ。


 生きていく意味が見いだせなかったから。


 それはマリーにとっては生きる事よりも辛い事だったのだろう。


 今なら自殺したマリーの気持ちが痛い程分かってしまう。


「マリーお嬢様、準備が整いました」

「ありがとう、アンナ」


 昨日から考えてばかりだ。


 そんな事を思っていると私を綺麗に着飾り、髪の毛のセットも終えたアンナが準備が整った事を声を告げてくれる。


 気は乗らないのだが、公爵家の長女である今はまだカイザル殿下の婚約者という立場である私が行かないという選択肢はない。


 わたくしのせいで家族に迷惑をかけてしまうなど、死ぬことよりも嫌だから。


 そしてわたくしは側使えのアンナ、そして執事のセバスを伴って用意された馬車へと乗り込み、パーティーが開催されるドミナリア帝国、その帝都の中心にある城へと向かう。


 その間、座っているだけで体力を削られる為に私は横になり、窓から見える星空をぼんやりと眺める。


 他の貴族がこの姿を見ればきっとはしたない、貴族淑女としてあり得ない等と言うのだろう。


 わたくしだってそう思う。


それがなんだか惨めで悔しくて、昨日からただでさえ情緒不安定だった私の感情が瞳から涙となって零れ落ちて落ちそうになるのに気付いたアンナが化粧が崩れないようにハンカチで涙を吸い取ってくれる。


ほんと、できた側使えである。


「お嬢様、もう少しで城へ着きます」


そして馬車の御者をしてくれているセバスから目的地付近まで来た事を教えてもらい、わたくしは重い身体を起こし、馬車から降りる準備をする。


水堀に掛けられた橋にある門、そこにいる門番へ身分を明かし城内へと馬車で乗り込み、予め指定された場所へ馬車を止めると、セバスが扉を開けて私へ手を差し伸べて来る。

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