第78話カイザル殿下だけは違いました
だが、それから数年経った今、こうしてシャルロットという友達ができたので結果婚約破棄をされて『ヘンドリク殿下の婚約者であり次期妃候補』という肩書が無くなって良かったのだろうと、今ならばもう。
むしろ最高のタイミングで婚約破棄が出来たとすら思ってしまう。
もし違うタイミングで婚約破棄、または正式に婚約破棄をされた場合、私はシャルロットとお友達になれていなかったのかもしれないのだから。
「それは良いのですけれども、それで話って何でしょうか? マーシー様」
「そんな、マーシー様だなんてっ! 私とシャルロットの仲じゃないっ! 『様』など付けずにマーシーとお呼び下さいましっ!」
「わ、わかりましたわ。 マーシー」
「はいっ、シャルロット。 それで、シャルロットへのお願い事でしたわね……」
そして、今日私がタリム領へわざわざ訪れたのは他でもない、今悩んでいる事をシャルロットから直接助言を頂きたくて訪れたというのに、いざその事を口にしようとすると恥ずかしくてなかなか言い出せなくなってしまう。
つい先ほどまでイメージしていた感じでは、サラッと言ってのけ、そしてシャルロットから助言を受け、後は楽しいお茶会をっという想像そしていたのだが、それがいざ悩みを無知にしようとすると私の口はなかなか開こうとしてくれないのだからおかしなものだ。
しかしながらこういった、想像だけでは知り得なかった感情を教えてくれる友達が私にはいるのだと思うとむず痒く、そして嬉しいものである。
「じ、実は……シャルロットに殿方の落とし方を教えて頂きたいのです」
「と、殿方ですの? ま、まさかカイザル殿下ではない別の殿方ではないですよねっ!?」
「ち、違いましてよっ! た、確かにカイザル殿下と婚約して、そして例のパーティーが終わってからの数年間のゴタゴタした期間は、なんて男運が無いのだろうと悩んでいた時期も確かにございましたが、しかしながらそのゴタゴタが落ち着いて、一度考えてみたんですの」
「そ、そうなんですのね……?」
まだ良く理解していないシャルロットへ、私は説明を続けていく。
「そうなんですのっ! 今まで私に近づいてきた殿方と言えば私ではなく、ヘンドリク殿下の婚約者という肩書しか見ておりませんでしたし、そのヘンドリク殿下といえば私ではなく男爵令嬢であるアイーダばかりに夢中で私の事なんて、たとえ婚約者という肩書すら見ようともしてくれなかったんですの。 でも、カイザル殿下だけは違いました」
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