第63話新聞社
わたくしがそう言うと、空気が静まり返えると同時に、皆の真剣さが伝わってくる。
ここに居る皆んなは文字どり一蓮托生、計画の最終目標であるタリム領独立を目指している事が王国側にバレた瞬間、関わった者達全員は死罪で間違い無いだろう。
「そ、それで……次に行う事が決まったのか?」
普段であれば進捗情報を確認しあって、問題があれば案を出して終わりなのだが、わたくしが本題と言った為、皆次が気になっているようである。
「ええ、これからタリム領では識字率が跳ね上がって来ると思いますので先手を打たれる前に今から新聞社を立ち上げますわ」
そしてわたくしがそう言うと、皆の顔には「それだけ?」という表情をしているのが見える。
「新聞社ねぇ……だが新聞がこの先どう我々の役に立つのかさっぱり分からんのだが」
そして、皆が思っているであろう疑問をお父様が代表して聞いてくれるので、それへ返答する。
「そうですわね。 今現在の新聞と呼ばれているものでは新聞社を作る意味がないですわね」
「なら作る意味はないと思うのだけれどもシャルロットの事だ。 きっとこれにも意味があるだろう?」
「流石お父様ですわね。 そもそも今の新聞は何かお大きな事件が起きた時だけに配る、いわゆる瓦版や号外といったものに近いのです。 そういう物ではなくて、地域のどうでもいい話、たとえばあそこのパン屋が美味しいですとか、作物の実りがいいですとか、天気予報などなど、事件性がない事でも載せていきますわ。 それを毎日発行いたしますの」
わたくしがそう説明しても皆まだ新聞社を作る真意を掴め切れていないようで頭の上にクエッションマークが浮かんでいるのが見える。
「そして、その新聞の枠に『広告』と『スポンサー』の枠を高値で売るのですわ。 きっとその枠は引く手数多で、その内枠も間違いなく売れますわ。 そうする事により、王家に次ぐ第二の権力として育て上げますの」
「ふむ、『広告』や『スポンサー』までは理解できるのだが、それがどうして王家に次ぐ第二の権力となるのだ?」
「それはですね、情報とは武器となり、そして民なくしては国にならないからですわ。 もし、我々が王家の黒い噂を大量に握っていたとして、それを民にばら撒く事ができる新聞という媒体で広める事ができるのだとすれば、王家はわたくし達へおいそれと手を出せなくなる事でしょう。 今はまだカイザル殿下の失態のおかげで王家はわたくし達に手を出せない状態ですけれども、それも後何年通用するかもわかりませんのでここら辺で第二の防護壁であり剣でもある新聞社を設立する、というのが目的でございますわね」
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