第32話これはもう相思相愛だろう

 そうわたくしが、顔を赤らめて宣言すると、周囲は祝福モードになり、ブレットは「話が違うっ!!」と目線で訴えて来て、レオポルトは怒りに満ち顔を真っ赤にして震えていた。


「ねぇ、ブレット。 わたくしの事は好きですか? 一人の女性として好意を寄せておりますか?」


 さぁ、追い詰めましてよ? ブレット。


 これだけ大勢の貴族に、おまけ程度ではあるものの今現時点では王位継承権第一位であるレオポルト殿下もいるのだ。


 ここで吐いた言葉は真実となり、一気に貴族の間で疾風の如く広まっていくだろう。


 婚約までであればまだ、婚約破棄という選択肢もあったのだが、愛を誓ってしまってはもう後戻りはできない。


 もし婚約破棄をしてしまっては不義理な男性として噂が広まり、レオポルトへ嫁ぎにいく女性は一気にいなくなる事であろう。


 そうなればわたくしが拾ってあげれば良いのである。


 まさに、どちらに転んでもわたくしはブレットを手にする事ができるのだ。


 だから。


 さあ皆の前で宣言するのです、ブレット。


『シャルロットを愛している』と言うだけで良いのです。


 そう目線でブレットに向けると、彼は同じく目線で『ハメやがったな』と愛ある返事をしきてくれる。


 返事の内容はともかく、目と目で通じ合う。


 これはもう相思相愛だろう。


 そんなわたくしを見てブレットは一瞬だけ諦めたような表情をすると、次の瞬間真剣な表情に変わり、わたくしを見つめてくる。


 ちなみレオポルト殿下はもはや路傍の石と化しているのだが、どうでも良いだろう。


「シャルロット」

「ひゃ、ひゃいっ!!」


 はっきり言ってなんだかんだでブレットは頭の切れる男性である。


 断るのならば今しかない事も、もしここでわたくしの告白を受け入れてしまったらどうなるのかも、全て分かっているだろう。


 そのため、もし断られでもしたらどうしようという緊張によりわたくしは大事な所で噛んでしまった。


 穴があったら入りたい。


「俺は、今まで君のことを見て育ってきた。 初めはこれが恋かただの仲の良い幼馴染という感情なのか、分からなかった。分かってしまうのが怖かったからだ。 もし分かってしまったら君は遠くに言ってしまうのではないかと。 結果この判断を俺は一生後悔する羽目になる。 シャルロットがレオポルト殿下と婚約したからだ。 でも今こうしてまたシャルロットは俺の前で笑ってくれている。 そんな日々が堪らなく愛おしく、そしてもう二度と手放したく無いと強く思う」


 そこまでブレットは一気にいうと、一旦間を置き、深呼吸をして口を開く。

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