第252話 いつまでも老いぼれが上にいては若い芽も育つまい

 そして俺がクロード姫の扱いに困っていると、俺の部屋に皇帝陛下が入ってくるではないか。


 そもそも俺の部屋に皇帝陛下が入ってくること自体もびっくりなのだが、今はそれどころではない。


 何故ならばまだクロード姫は俺に隷属されている状態のままであるからだ。


 何故俺の部屋に皇帝陛下が来たかは分からないのだが、とにかく今はクロード姫を隷属してしまっている事を隠し通さなければどうなるこ──


「それで、我が娘であるクロード姫を隷属したそうなのだが……その責任はどう取るつもりかね? カイザル君」


──とかと思っていたのだが、すでに知られてたみたいである。


「すみませんっ! 何でもいうことは聞きますので死罪と俺の奴隷達に手を出すことだけはどうかお許しをっ!!」


 こうなると弁明する余地もなければ、逆に弁明すればするほど立場は悪くなるので言い訳せずに開口一番誠心誠意謝罪をするのが一番である。


「ん? 今カイザル君は『何でもする』って言ったかね?」

「はいっ!! 死罪と奴隷達に手を出す事以外であれば何でもしますっ!!」


 とりあえず、例え炭鉱に送られたとしても俺の今の能力であれば生き延びる事もできるだろうし、ドラゴンを討伐せよという、普通であれば無理難題の命令でもこなす事ができるだろう。


 まぁ、最悪死罪や奴隷達に手を出すとなれば全力で抵抗はさせてもらうのだが、元を辿れば誰が悪いのかと言われればクロード姫を隷属してしまった俺にあるわけで、その罪くらいならば背負うべきだろう。


 相手の意思を確認せず騙す形で隷属するというのはそれほどまでに重い罪だとも思っているので、俺ができる範囲であれば受け入れるつもりである。


「そうかそうか、何でもしてくれるのか」

「はいっ!死罪と奴隷達に手を出す事以外であれば何でもしますっ!!」

「であれば、そうだな……クロード姫と結婚してくれないか?」

「はいっ!! …………………………………………………………はい? いやいや……なんで?」


 俺が思っていた内容とあまりにも異なりすぎて俺は思わず皇帝陛下相手に素になって聞き返してしまう。


「儂、結構今まで皇帝陛下として頑張って帝国を統治してきたと思っているのだ」

「は、はぁ……そうですね。 他国と比べて帝国は比較的豊かで治安も良いですからね……」


 しかしながらそれと俺がクロード姫とが結婚する意味が分からない。


「そうだろうそうだろう。 儂は今まで頑張ってきたのだ。 だからもうそろそろ隠居して遊びまくり……隠居して静かに余生を暮らしたいと思っておるのだ。 いつまでも老いぼれが上にいては若い芽も育つまい」

「いや、皇帝陛下はまだ四十歳になられたばかりですよね?」

「…………それは、あれだよカイザル君。 いつまでも老いぼれが上にいては若い芽も育つまい。 そうだろう?」

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