第246話 後半の最後あたり
「ほ、本当かっ!? 恩に着るっ!!」
「いえいえ、それくらい私のご主人様であるカイザル様にはお安い御用ですよっ! ふふんっ。 これで少しは私のご主人様であるこのカイザル様の懐の深さと偉大さの片鱗を知れたのではないですかっ!!」
「あぁっ!! まさかこれ程器の大きな奴だとは思わなかったよっ!! むしろなんで今までその事に気付けなかったのかと過去の自分が恥ずかしいと思うのと同時にブリジット達がカイザルにお熱になるのも分かるなっ!!」
いや、俺引き受けるとは一言も言ってないんだが? おかしいな。
そして、そんな俺を見てカレンドールが「任せてくださいカイザル様。 私がなんとかこの場を収めて来ましょう」と言うではないか。
流石カレンドール。 脳筋ゆえに思った事を何も考えずに実行して突っ走ってしまうブリジットとはわけが違うぜっ!!
そしてカレンドールは「みなまで言わずともカイザル様が今何を考えてるのか大体察しはつきます」と自信満々に言ってのけてブリジットとクロード姫が話している会話に入っていく。
あぁ、なんと頼もしいのだろう。 流石カレンドールである。
「ではクロード姫。 こちらの用紙にサインをお願いします。 一応カイザル様は貴族ですので約束事にはどんな小さい事でもこうして書面にして残しているのです」
え? そうなの? 初耳なんだが……? 今までは俺の代わりにこうして裏でやってくれてたのかな?
「あぁ、それもそうだな」
「こちらペンでございます」
「おぉ、わざわざすまない。 ………く、ろ、ー、ど、っと。 うむっ! サインしたぞカイザルっ!! さぁスフィアを助けに行こうっ!!」
そして何の疑いもなく、さらにカレンドールが出した書類を読むこともせずにサインをするクロード姫と、それら一連の流れを後ろで見ていた俺の目には見慣れた奴隷紋がクロード姫のうなじ部分に浮き上がって来たのが見えるのだが気のせいだろうか?
何故だろう、脂汗が止まらない。
「カレンドール……ちょっとその書類見せて?」
「? わかりましたカイザル様」
そして俺は間違いであって欲しいと願いながらカレンドールから先ほどクロード姫に渡した書類一式を持ってくるように言う。
そこにはA4サイズの容姿に小さな文字でびっしりとどうでもいい当たり障りのない事が書かれており、後半の最後あたりに『よってサインしたものはカイザル様の奴隷となる』と記載しているのを確認してしまう……。
なんだこの訪問販売を利用した詐欺のような手口は……?
前世であればこのような方法は契約無効にできる可能性が高いのだが、悲しいかなここは異世界であり、クロード姫のうなじにはガッツリと奴隷紋が浮き上がっているのが、何度見返しても見えてしまい、この事がまごう事なき現実であるという事を教えてくれる。
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