第220話 蹴っただけでこれとは情けない

「あ? 俺にそんな目線を向けても大丈夫なのか? まぁ、自分の強さも相手の強さも分からず相手に噛みついてくるバカだから仕方ないのか」

「それはアンタじゃないの?」


 そして目の前のバカはこの私に向かって『力の差も分からないバカ』と言いやがったではないか。


 今の私を見て未だに見下すような発言をしていたところからも私の強さを理解していないみたいなのだが、まさかそれを口にする程のバカだとは思わず、思わず言い返してしまった。


「テメェ、今なんつった? ぶっ潰すぞッ!!」

「ぶっ潰す? アンタが、この私を? 冗談も休み休み言ってよね。 そもそも初めからぶっ潰すつもりだったのによく言うわ。 恥ずかしくないの? アンタ」

「……さっきから俺が手を出さないからって調子に乗りやがってっ!!」

「あれ? それで本気? 蝿が止まるんじゃないかって思えるほど遅いんだけど」


 そして目の前のバカは、初め自分が挑発して来たにも関わらず逆に私に挑発されると唾を飛ばしながら鬼の形相で私に襲いかかってくる。


 しかし、そいつの攻撃はブラックローズの面々と比べると、比べること自体が失礼だと思ってしまう程に遅く、簡単に避けれてしまう。


「畜生っ!? なんで当たんねぇんだよっ!! おかしいだろうっ!?」

「ちょっと、ゼン。 何やってんのよ。 遊ぶのも大概にしろよなっ」

「いや、本当に当たんねぇんだっ……ギャインッ!!」


 そして私は当たりそうで当たらないギリギリを見極めて避けていたのだが、流石に飽きて来たのでそいつの股間を思いっきり下から蹴り上げてやる。


 するとそいつは相当痛かったのか、まるでキンタマを潰された犬のような鳴き声を上げながら跳ね上がった後、泡を拭きながら白目を剥き倒れるではないか。


 たった一回思いっきり蹴っただけでこれとは情けない。


「コッチは簡単に当てれるんだけどね。 とりあえず、まだ使えるかもしれないからとどめとして踏み抜いてあげよう」

「テメェ、私のゼンに何をしやがったっ!?」

「は? 何って股間を蹴り上げただけだけど? それから、今からその股間が使えなくなるようにとどめを刺しに行くんだからどいてよ。 邪魔なんだけど? この村の掟では強者が絶対で弱者は何をされても泣き寝りをされなきゃだめなんでしょう? この私にそうしたように」

「はぁっ!? だからあのゼンがお前如きにやられるわけがねぇだろつってんだよっ!! テメェ、何をやったか──」

「邪魔だって言っているのが分からないならお姉ちゃんも潰すよ?」

「やれるもんならやってみろよこのクソガキがッ!! 妹の分際で姉に逆らってんじゃねぇよっ!!」


 

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