第202話 殴った上に怒りますよ?
そう言って儂は深いため息を吐く。
この帝国の皇帝の長男として産まれて来て今までこのような事が立て続けに起きた事など今の今まで無かった上に、今儂の息子であるクロードがどうやら魔術学園で傍若無人な態度を取り、周りに迷惑をかけまくっているという話も耳に入って来ており頭を抱えたくなる。
正直な話、長男にでもこの座をさっさと渡して離宮に引きこもり野菜でも育てながら自給自足のスローライフを過ごしたい願望が日に日に大きくなってきている。
だというのに次男は性格に難がありと分かったし、頼みの長男に至っては名前と素性を隠して冒険者をしている為めったに帰ってこない始末。
恐らく実家に帰ったら皇位を継承させられて冒険できなくなるとでも思っているのだろう。
それを裏付けるかの如く次男の性格が露呈し始めるにつれて長男の帰省する頻度が明らかに落ちてきているのだ。
しかも草達の報告では『俺の夢は固まったっ!! 首輪を付けた奴隷メイドに愛される事だっ!!』などと叫んでおり、パーティーメンバーからドン引きされているというではないか。
こんなくだらない事を宣言する前に婚約者の一人でも作ってもらいたいものである。
本当、儂の子供達はやる気があるのかと一度小一時間叱ってやりたいと思ってしまうのは致し方無いと儂は思う。
「あー、儂、皇帝やめいたいなー」
「何を言っているのですが。 今あなたに皇帝を辞められたら一体誰が皇帝陛下の行って来た仕事を代わりにするのですか?」
「どうせ儂の仕事など、国庫の使用許可を出すというのは部下が抜かりが無いかチェックし終えている奴にハンコをポンと押すだけだし、後は他国を治める者と会合したりするだけで、ぶっちゃけ儂である必要なくない? あ、もういっそ君が儂の代わりとして息子たちが皇位を継承するまで皇帝やっちゃう?」
「……この親にしてあの息子たちありですね」
「ん? 何か言ったかの?」
「いえ、私が皇帝陛下の代わりをするなど到底無理な内容でございますと申しました」
まったく、こいつもこいつで昔から堅物でかつ真面目であり、この堅物で真面目というのは儂の側付きとしては優秀かもしれないが時として柔軟な対応は苦手であるという欠点がたまに傷であり彼の価値を下げてしまっていると儂は思う。 そう今みたいに。
「陛下。殴りますよ?」
あ、目がマジだ。 そう直観的に感じた儂は常人では見切れないスピードで土下座からの謝罪をする。
皇帝陛下からの土下座に耐えられる人間など存在しない為、実質儂の土下座は最強という事になる。
「……………………殴った上に怒りますよ?」
そして儂はこの後殴られる事は無かったのだが小一時間小言という名の有難いお叱りを受けるのであった。
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