第193話 カイザル様への忠誠心
「それに関しては私も未だに驚いているのですが、それもこれも全てはカイザル様のおかげです。 そもそも奴隷で売り飛ばされ、流行病にかかってしまい死にかけていた私を救ってくださったのがカイザル様で、当初は貴族の慰みものにされて捨てられる人生だと思っていましたので、今のこの現状が本当は死にかけの私が見ている夢なんじゃないのだろうか? と、ふとした瞬間にこの幸せな夢から目覚めてしまうのではないかと思うくらいには幸せすぎて怖いくらいですね。 幸せすぎて怖いってよく分からないですよね……、でもいつかこの生活が終わるんじゃないかと思ってしまうんですよ」
私の軽い質問に気さくに答えてくれるのだが、何だか後半は少しばかり重い話になってしまい思わず私は彼女を抱き締めてしまう。
ここにいる奴隷達は皆何かしら、大なり小なり心に抱えている物があるのだろう。
奴隷に売り飛ばされるという事はそういう事なのだ。
誰も好き好んで奴隷商に自分自身を売りに来るものなどいるはずがない。
そして買われた奴隷の末路がどうなるかなど、考えなくてもわかる話である。
男性ならば荷物持ちか炭鉱送りなのだが、まだそっちの方がマシであるし、実際に金のなる木である以上元手以上儲けさせる為に早く壊れてしまっては元も子もない為それなりの待遇を受ける場合も多い。
そして金のなる木である以上基本的には男性から買われていく。
中でも男性は後取りとしての養子、その中でも貴族の養子に選ばれる場合も中には稀にあるみたいでまだ希望がないわけではない。
しかしながら女性は違う。
女性奴隷は基本的に性奴隷が一般的であり、特殊性癖の貴族がまるで消耗品かのように扱っては捨てるという話もよく聞くくらいである。
たとえ貴族の愛人となれた所で若さが無くなれば打ち捨てられる。
それが女性奴隷であり、男性奴隷と違って一切の希望がないのである。
そりゃ、もしかすれば探せば少しくらいは幸せに暮らしている女性奴隷もいるのだろうが、そういう場合は基本的に娘を事故で亡くし、立ち直れずにいる夫婦に、見かねた親戚がその娘に似た奴隷を買い与えるといったケースであり、一見幸せに見えるのだがその夫婦の精神はとうの昔に狂っているのである。
その関係に耐えられずに奴隷まで精神を壊して、自我を無くし本物の娘であると思い始めるという話もあるそうだ。
それが幸せかどうかは分からないのだがまともではないのは分かる。
だからこそ、彼女達は今この現状が無くなる事を極端に恐れていると言ってもいい。
それこそ帝国に歯向かう事も躊躇すらしないほどには。
彼女達にとっては帝国よりも自分達を助けてくれたカイザル様への忠誠心の方が圧倒的に大きい。 むしろ帝国には忠誠心が無いまである。
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