第175話俺の青春を表す代表的な魔術
ちなみにゲーム内では一度の戦闘で同じ魔術は四回までしか使えないのだが、当然この世界にそんなゲームの様な制約などない。
それは言い換えれば使用回数を考えて戦闘の流れを組み立て、相手の裏を読み立ち回る必要が無く、脳死状態で低段位の『解術』をとりあえずブッパというクソつまらない戦闘が可能となるという事でもある。
だがクソつまらないのはゲームバランスを考えた時であり、リアルの殴り合いや殺し合いならばこれ程頼もしくて楽しい事はない。
ゲームは死なないからこそ勝敗のやり取りが楽しいのであって、俺は生死をかけた戦いを楽しむような戦闘狂ではない。
もしそういうのが好きであればゲームではなくボクシングなどの格闘技にのめり込んでいた事だろう。
生死の戦いと、安全圏から好きな魔術を好きなだけ行使できるのならば後者の方がどう考えても楽しいに決まっている。
『え? 何で? 何が起こったの? 私は確かに火球を放った筈なのにっ!!』
そしてファルールは何故自分が放った筈の魔術が消え去ったのか理解でき図、少しパニックになっているのがその狼狽えようから窺える事ができる。
『ど、どうせまぐれか何かか、たまたま不発だっただけよねっ!!』
その結果火球が消えた理由も解決する事なく、たまたま、まぐれ、という事にしたらしく、ファルールが取った行動はただただ火球を連続で放つという内容であった。
そして俺に向かって放たれる火球、それら全てが跡形もなく消されて行き、火球が消される度にファルールの顔が青ざめていく。
「そろそろ火球が消されるのがまぐれでも何でもなく、俺の実力だという事に気づいたか?」
『そ、そんな訳がないっ! そんな事があって言い訳がないじゃないっ!! どんなイカサマをしているのよっ!?』
「それが残念な事にイカサマじゃないんだな。 因みにこんな事もできる『闇・水複合魔術段位四:禁術』 対象はファルールで火球を選択。 これで今から三分間は火球が使えなくなる」
『火球を封じたですってっ!? そんな魔術ある訳ないじゃないっ!! ハッタリもここまで来ると可哀想に思えてくるわねっ!! ん? あれ? あれれ? 火球が出ないっ!?』
「だから三分間使えなくしたと言っただろう?」
この『闇・水複合魔術段位四:禁術』なのだが、ゲームの大会ではいかにブラフに使って相手のカウンタースペルを使わせ、最後の負け筋候補の魔術をロックして勝つというのが青黒コントールの基本的な動きであった程に強力かつ使用率の高い魔術の一つであった。
『解術』に『禁術』……懐かしすぎてノスタルジーに浸ってしまいそうになるほどには、まさに俺の青春を表す代表的な魔術である。
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