第133話 取り付く島も無し
◆
「ちょっとアナタッ!! それはどういう事ですかっ!?」
「ど、どいう事というと……?」
我は今、主であるカイザル様の元からドラゴンの里にある我の巣へと帰ってくると、妻であるルールールー(愛称はルー)が我を見つけた瞬間に鬼の形相となり詰め寄ってくる。
しかしながら浮気も当然していなければ何もやましい事はした覚えがないので我はただただ縮こまってルーの怒りをいつものように耐え凌ぐのだが、今日はいつもと違い何故か娘のファルール(愛称はファルー)までやって来て妻のルーと一緒に俺を責め始めるではないか。
「お父様っ! どういう事というのは私達の方ですっ!!」
「ちょっと待ちたまえファルーっ! それとルーもっ! 何か勘違いをしているのではないかっ!? 我は浮気もしていなければ何も疾しい行為は何一つもしておらぬっ!! 我が名に誓っても良いっ!!」
「「そういう問題ではないですっ!!」」
そして我が身の潔白を誓うと言っても二人は取り付く島も無し。
そういう問題ではなければどういう問題だというのかと問いただしたいのだが、ここで少しでも口ごたえをしようものならどうなるか、火を見るよりも明らかあので我はただ黙って耐え凌ぐ。
これでも我は世界に数カ所あるドラゴンの里の一つの長であるのだが、他のドラゴンが今の我の姿を見るとどう思うのか……。
絶対に家族以外には見られてはいけない。
「分かった。 我が悪いというのは分かったから、どこがいけなかったのか教えてはくれぬか? 知らないままでは直しようがないゆえ」
「あら、アナタ。 まだしらばっくれるつもりですか?」
「流石にしらばっくれるのは無理がありますよ、お父様っ!!」
そして二人はそう言うと俺の身体へと視線を向け、指をさす。
「その今着ているものは何ですかっ!? 当然アナタだけという事はないですよね? 愛している妻にもちゃんと同じような装備はいただいて来ているんですよねっ!? そもそもドラゴンである私たちが装備できる物があるのならばなんで今まで黙っていたのですかっ!? 知っていたらデザインを考えて来ましたのにっ!!」
「本当ですよ、全くお父様は。 そして当然私の分は可愛く出来ているのよねっ!? 信じるからお父様」
「い、いや、これはだな、実は──」
「言い訳はいいから早く見せなさいな。 それともまさか、私たちの分は作らず自分の分だけを作ってきたなんて事は、言わないわよね?」
「もし自分のだけ作ってきたと言うのならば、もうお父様とは口を聞いてあげませんっ!!」
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