第130話 感謝して欲しいものだ

 しかしながらただ奴隷が用意した首輪をつけてあげるというのも味気ないと俺は思う為、付与魔術を付与した上で彼女達につけてあげることにする。


 それは体力、素早さ、筋力、魔力など、彼女達一人一人に合ったステータスを一割ほど上昇させるものであり、ゲーム内では大した代物ではないのだが、この世界ではよくて五パーセント上昇程度なので破格と言えよう。


 一割以上上昇させる付与魔術も有るのだが、それは流石にこの世界では規格外で有ると思う為、一割ぐらいが丁度良いという判断からである。


 そもそも一割の時点でこの世界では規格外なのだからこれ以上となると自力で付与魔術を習得して自分で付与して欲しい。


 そんな事を思いながら俺は今回闇ギルドマスターで有るベルムードの居場所を見つけてくれた奴隷グループの四名へ受け取った首輪へそれぞれに合った付与魔術を付与してから首輪を着けていく。


 そして全員首輪を着け終えると、そこには涙を流しながら幸せ絶頂といった表情をしている四名の奴隷達がそこにいた。


 そして彼女達は流れる涙を拭う事もせずそのまま頭を下げて跪く。


「「「「我ら命はご主人様に捧げます」」」」


 なんだろう……こういう時どういう対応が正解なのか分からないのだが。


「お、おう……。 だが、程々にな……? 無理はするなよ?」


 そして俺はしどろもどろになりながらも何とかしてそれっぽい事を言ってその場から離れ、闇ギルドマスターのベルムードから指輪を強引に奪いに行くのであった。





「「お帰りなさいませ、お兄様」」

「ああ、ただいま」


 一仕事終えた俺は目的の指輪を手に入れた後、面倒くさい後始末を全てカレンドールに丸投げして久しぶりに実家へと帰ると、弟と妹が玄関まで迎えに来てくれるではないか。


 こんな事、過去一度もなかったので今日は槍でも降るかもしれない。


 因みに父親と、義母と同じように天国へと送ってやってもよかったのだが、どうせなら奴隷にしてクヴィスト家の跡取りと領地運営、そして貴族界の面倒くさいお茶会やパーティー、婚約者探し等々その他諸々をコイツらにさせたほうが楽ができると判断してあえて生かすことにした。


 今では短時間で叩き込んだ甲斐もあって算盤を使って少し複雑な計算も何のそのである。


 人間死ぬ気でやれば想像以上の力を発揮するんだなと感心したほどだ。


 そのお陰で俺はこうしてクヴィスト家絡みの面倒事はコイツらに丸投げできるという訳である。


 そもそも当初から俺にクヴィスト家を継がせる気など無く、弟に継がせる気満々であり弟もそれが当たり前だとのたまっていたので、俺はある意味では弟の夢を叶えてあげた事になる。


 感謝して欲しいものだ。

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