第129話 良いネクタイ





「良くやったお前達っ!!」

「い、いえ。 ご主人様の為ならばこれくらい当たり前ですっ!」

「そ、そうですっ!! あ、当たり前ですっ!!」

「む、むしろここまで喜んでくれるとは思わなかったから、逆に私達からすれば思わぬボーナスと言いますか……」

「こ、これでご主人様の夜伽に呼ばれるかもしれませんね……っ!!」


 闇ギルドマスターであるベルムードが王都近くの領地に潜んでいるという情報を手に入れた俺は、その情報を仕入れてきた奴隷グループを褒めてやると、皆俺がここまで喜ぶとは思っていなかったようでそれぞれ思い思いにびっくりしつつも褒められて満更でもないといった感じである。


 若干一名、何いっているのか分からないので、分からないものをわざわざ解読する必要もないだろう。


 そして、そんな彼女達をブリジットとサラが羨ましそうに眺めているのが目に入る。


 空気が少しばかりピリついているのは気のせいだろうか?


 ちなみに今回闇ギルドマスターであるベルムードを見つけて来てくれた四名の奴隷グループは、俺が丹精込めて本格的に隠密行動特化に育てた奴隷達の内のいちグループである。


 うまく育ってくれているようで、その成果がこうして目に見えて分かるというのも、今回俺が喜んでいる理由の一つでもある。


 この隠密部隊なのだが、犬系の奴隷で固めており、今回の四名の奴隷グループも内二名が犬系の獣人である。


 やはり、隠密にい置いて嗅覚という武器があるのと無いのとでは雲泥の差であろう。


 そして、その四名の手には首輪が握られており、目をキラキラさせながら俺を見ているのは気のせいだろうか?





「全く、ご主人様は少しばかり奴隷達に優しすぎると思いますっ!!」

「そうは言われてもなぁ。 頑張って、そしてその頑張りが目に見えて成果が出たのであればご褒美をしてあげたいと思うのは仕方がないだろう?」


 あのあと彼女達の圧に押し負けた俺は、一人一人に首輪をつけてあげたのだが、その事が少しばかりブリジットは納得いかないようで今現在俺は闇ギルドに向かいながらブリジットから小言を言われていた。


 ブリジットの言いたいことは分かるのだが、前世でのやり甲斐搾取という名のサービス残業という虚無を経験している俺からすればブリジットに小言を言われようとも『何もしない』という事は避けたいところである。


 しかしながらそれが『首輪をつける』という行為で良いのか? と疑問ではあるものの彼女達が「首輪でいい、いや首輪が良い。 首輪じゃなきゃ嫌だ」とまで言われ、そしてあれ程まで喜んでいる姿を見せられては、きっと良いのだろう。


 俺にはよく分からないのだが、他人は他人で奴隷は奴隷だ。


 前世でいう所の『良いネクタイ』を欲しがるようなものだと思えば納得もできる。 

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