第二章

第96話裸の王様

「学園はどうだった? 今日は魔術戦闘実技と実技戦闘実技の実力テストがあったと聞いたが、勿論お前ならばあのいけ好かないモーデル家の娘であるブリジットや、アーバン家の娘であるエミリーよりも成績は上であったのであろうな?」

「何を言っているのアナタ。 私たちルイス家の血を引くカレンドールですもの。 心配しなくともきっと大丈夫ですわよ。 まったく、娘の事となると周りが見えなくなるんですから」

「当たり前であろうっ! なんてたってカレンドールの学年には兄と違って帝国や皇族の護衛を任されているモーデル家や魔術に長けるアーバン家、それだけではなく皇族であるクロード殿下までいるのだ。 気にするなという方が無理があるだろう。 まぁその中でもクヴィスト家のカイザルは使えないポンコツであったがな」


 そういうと私のお父様であるグレイスはクツクツと笑う。


 それはまるで笑いを我慢しようとしていたが、我慢できずに笑いが溢れてしまったようであった。


 そのお父様の笑い声に釣られてお母様であるマーガレットも優雅に笑う。


「当たり前です、お父様、お母様。 今回の成績は魔術戦闘実技、武器戦闘実技ともに私が一位をいただきました。 そしてカイザルに至っては今回も魔術戦闘実技、武器戦闘実技は最下位でした」


 そして私がお父様の問いにそう答えると、お父様は豪快に笑い、お母様は扇子で口元を隠しながら笑い始める。


 私はカイザルが嫌いだ。


 殺せるのならば殺してやりたいと思うほどである。


 貴族の、それも公爵家であり自身の持つ能力を向上させる環境が整っているにも関わらず、あいつはいつまで経っても向上しようとはしない。


 その姿を見るだけで殺意が湧くとともに、あいつのようにならなくて良かったと私は強く思う。


 クヴィスト家は公爵家というだけはあり権力だけはあるのだが、その権力もいつまで維持できるか怪しいものである。


 結局のところは家格という肩書と、それによって生まれる横の繋がりが権力となるのだが、今の代に変わってからのクヴィスト家の傍若無人な振る舞いに嫌気がさしている貴族はかなりの数になっている。


 その内見限られて、気がつけば裸の王様となっている事だろう。


 そうなってしまってはあのクヴィスト家と言えども流石に終わりだ。


「それでは、私はこれで」

「ああ、鍛錬か。 練習熱心なのはいい事なのだが無理だけはするなよ? お前はこの家の宝なんだからな」

「頑張ってねっ」


 そして両親の声を背に、鍛錬用に作られた裏庭へと向かう。

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