第77話修行が足りないなと反省する

 そう言いながら俺はわざと見下すように父上を見る。


「貴様、こんな事をしでかしてタダでは済まさんぞっ!!」

「あ? タダでは済まさない? それはこっちのセリフなんだが?」

「ひっ!?」


 おっと、ついブチギレる寸前まで怒りが込み上げてきて殺気が溢れてしまったみたいである。


 俺もまだまだ修行が足りないなと反省する。


 感情を優先して理性をどこかへ追いやってしまってはコイツらと、ただ目障りだからと言う理由だけで俺の母親を殺したコイツらと何も変わらない。


「それはそうとグエン。 お前、俺の奴隷にちょっかいを出そうとしていたみたいだな?」

「ふぁ、ふぁんふぉふぉとふぁっ!?(な、なんの事だっ!?)」


 焼け爛れたその顔では喋り辛いのか、ほとんど何を言っているのか分からないのだが、コイツの性格とイントネーッションから何となく解釈するが恐らく内容は合っているだろう。


「あ? 最近ギルドに出没している奴隷を奪うだの何だの言っていないとでも? あの娘達、俺の大切な奴隷達なんだけど? モーデル家が見回りを強化しなければどうなっていたか。 それはそうと君は、何かね? グエン君。 他人の物は勝手に奪っても良いとでも思っているのかい?」

「ふぉれふぁ──」

「ああもう何言っているか分ら無いから特別回復魔術をかけてやるよほら」

「こ、この俺が使ってやると言っているんだっ! あの奴隷達もその方が幸せに決まっているっ!! それに嘘をつくなっ!! 貴様如きゴミ虫があんな奴隷を買える訳もないだろうっ! はったりもまともにできないとは流石ゴミ虫だなっ!! それに、他人の物を奪うだ? 俺がわざわざ貰ってやってんだよっ!!」


 何コイツ。


 ちょっと回復魔術をかけた事を後悔してしまう程にはマシンガンのように聞くに耐えない言葉を吐き続けているんですけど。


 それと、父上。


 俺の死角から剣を抜刀していにじり寄って来ているのも丸分かりなんですが?


 恐らく、父上の滑稽な動きを見たグエンが敢えて俺を挑発するような言葉を言って、俺の気を引こうとしていたのだろう。


 こうもバレバレでは滑稽というか、逆にマップ機能が鬼畜というか。


 マップ上には名前こそ出ないものの赤いマークにより一度見た敵の位置は丸わかりである。


「死ね糞虫がっ!! 弟に夢中になって、俺の事を無視したのが貴様の敗因だっ!!」

「何が敗因だって?」


 奇襲のつもりなのだろうが、だったら攻撃する瞬間に大声を出すとかアホなのかと思いながら俺はストレージから取り出したS S S武器の黒龍刀・極を取り出すと、その勢いのまま父親の腕を切り落とす。


「……へ? え? お、俺の腕が……?」

「いや、何で他人を斬ろうとして自分は斬られないと思ったんですか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る