第78話口だけあれば問題はない
そして父上は何が起こったのか分からないという表情で俺と、地面に落ちた自分の腕とを交互に見つめる。
父上は恐らく斬られた事すら即座に理解できていないのだろう。
斬られた本人ですら戸惑ってしまうほどの斬れ味、さすが課金ガチャで手に入れたS S S武器と言った所か。
「それから父上、奇襲というのはこういう事を言うのですよ?」
「へ………?」
まだ状況が掴めていない父上を俺は無視をして、指を『パチン』と鳴らす。
すると、まるで忍者の如き動きで一瞬にして現れた元クヴィスト家のメイド長、メリッサが背後から父上を小刀で一突きし、父上の胸から小刀が突き抜ける。
「お久しぶりですね、元雇い主様」
「き、貴様は……そうか、貴様がグルで、裏で我々の動きをこのゴミ虫に伝えていたのかっ!?」
「いえ? 私は何も伝えていませんよ? むしろ貴方達がボンクラすぎて何もしなくても全て御主人様にはお見通しであり、常にご主人様の掌で踊らされていたんですよ? そういう私もその事に気づけなかったので他人の事は言えませんが」
そう言いながらメリッサは、父上の背中を足の裏で押しながら小刀を抜き取り、父上は血を流し過ぎたのか『ドシャリ』と音を立てて崩れ落ちる。
「貴族の中でも武闘派と言われていたグルド・クヴィストがこうも呆気なく、まるで子供の手を捻るかの如く倒してしまうとは……流石ご主人様でございます」
「いや、トドメを刺したのはメリッサだから」
「ふふ、ご冗談を」
そして周囲を見渡すと、俺の奴隷達が集結していた。
皆、軍服のような黒い秘密結社の制服と、黒い仮面を付けており、その異様さが際立って見える。
そして魔術師としても尊敬していた父上が呆気なく倒され、周囲には(弟達にとって)見た事もない異世界の軍服のような衣服を着ている集団に囲まれているそんな現状に、弟も妹も、そしてコイツらの母親である女性も、恐怖で顔が歪み、常に飛んでくる罵詈雑言どころか呼吸すら危ういのが見て取れる。
弟と妹に至っては失禁までしているようだ。
その光景を見て、ようやっとこのバカ共にもどちらが上か心の底から分からせた事ができたみたいである。
「メリッサ、父上を回復してやれ。 体力だけで良い。 腕は別にもういらないから治さなくても構わないだろう」
「かしこまりましたご主人様。 よかったですね、元雇い主様。 偉大なるご主人様にご慈悲を与えられて」
コイツは口だけあれば問題はない。
そして俺はゆっくりと、そして威圧しながら弟達の方へと近づいて行く。
「く、来るなっ!! 俺の負けだっ!! な? だからもう良いだろうっ!?」
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