第67話危ない所だった
私がそういうとジュリアンナは「分かる分かるっ!!」と言いながら激しく頷き、同意してくれる。
そして、私の同じ悩みないし性癖を抱えている人が身近にいて少しばかり安心してしまう。
私一人ではないという事は心強いものである。
「だって、カイザル様はお屋敷で仕えていた時とはまるで別人のようにお強くて、優しくて、頭も切れて、そして顔だけは昔から良かったのですけれども、このスペックで顔まで良いなんてもう、恋してしまいそうですよねっ!!」
「あのカイザル様の虫けらを見るような目で今一度私をいたぶって頂ければどれ程幸せな事か。 いえ、この際多くは望みません、虫けらを見るような目で一目見ていただけるだけで私は満足なのだけれども、ここ最近のカイザル様の目線は慈愛に満ちており少々物足りないと言いますか……」
「「……え?」」
おかしい。
少しばかり私とジュリアンナの話が嚙み合わない気がするのだが、気のせいであろうか?
「えっと……先程メリッサさんから『虫けらを見るような目』という言葉が聞こえて来たような──」
「気のせいです」
「え? いやでも──」
「気のせいです。 私が言ったのは、カイザル様は素敵で惚れてしまいそうですよね、と申しましたのよ? まさかあのカイザル様に対して虫けらを見るような目という言葉を使う訳がないでしょう。 ジュリアンナも少し考えれば分かるでしょう? それに、私が変な性癖に目覚めてしまって毎晩カイザル様になじられたい、罵られたい、踏みつけられたい、軽蔑した目で見て欲しいと悶々とした日々を過ごし、ここ最近ではわざとカイザル様の前でミスをして罰を受けようかと本気で悩んでいるなどとは全くもってこれっぽちも言っておりませんし思ってもいませんからっ!」
「……………………今まさに自分で言ってるようなものでは?」
「気のせいです。 言っていません。 幻聴でしょう。 疲れているのよジュリアンナは。 さぁ、今日はもう休んで良いから、しっかりと休養を取りなさいな」
「え? でも」
「良いですね?」
「は、はい」
そしてジュリアンナは私に促されるまま、首を傾げながらもこの場を離れて行く。
あ、危ない所だった。
危うくジュリアンナに、あの日カイザル様により捻じ曲げられた性癖がバレてしまう所でしたわ。
それもこれも全て、今日までお預け状態にしているカイザル様が悪いと思います……そ、そうだわっ!! 私、良い事を思いつきましたっ!!
こうなれば善は急げである。
◆
「で、ですから私を踏みつけてくださいっ!!」
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