第37話記憶が戻ろうが戻らまいが、屑は屑

「私の為と言うのであれば放っておいて下さい。 さ、行きましょう。カイザル様」

「あ、ああ」

「おい待てっ! まだ話は終わってないぞっ!!」

「私のご主人様を屑呼ばわりする人の話など聞く必要はございません」


 なんというか取り付く島もないとはこういう事を言うのだろうか?


 少しだけクロード殿下が可哀そうに思えて来る。


 そして、打ちひしがれているクロード殿下を見るのはなんだか罪悪感を感じてしまい居心地が悪い為、目線を逸らすと、何とも言えない表情をしたスフィアが目に入って来る。


 クロード殿下もそうなのだが、俺の周りは常に誰かが傷つけられてきており、そしてこれからも傷付けられる人は出て来るのだと、今一度思い出させてくれる。


 そう、俺はクロード殿下が言うように屑であることは間違いないのに、前世の記憶が戻ったとしても今まで俺が行ってきた事が消える訳でもないのに、一人ブリジットというクラスメイトが仲間になったというだけでその事を忘れかけていた、どうしようもない奴には変わりない。


 記憶が戻ろうが戻るまいが、屑は屑。


 それだけの事である。


「どうしました? カイザル様」

「いや、自分の立ち位置を再確認しただけだ。 何でもない」

「? そうですか。 何か私にできる事があれば何でもお申し付けください。 私はカイザル様のいn……ではなく、剣なのですから」


 コイツ今犬って言いかけなかったか?


「あ、ありがとう。 その言葉だけでも救われるよ」

「ど、どう致しまして。 これくらいでしたらお安い御用ですのでいくらでも、いつまでも言って差し上げます」


 そして、一人だけクラスに俺の事を分かって貰える人がいる(ただし変態)、ただそれだけで折れかけた心を何とか折らずに過ごせそうだと思ってしまえるくらいには、普通の人間なのだ。





 そして俺たちはまるで客寄せパンダの如く他人からジロジロと見られ続けた一日を終えて他の奴隷達の元へと行く。


 と、いうのも没落貴族が売りに出した別荘を買い取ろうと思っていたので奴隷達と一緒に相談して決めようと思っていたからである。


 そう告げると、わざわざ奴隷の意見など聞く必要は無いと言われたのだが、これからそこを本拠地として過ごすのは奴隷達なので、やはり奴隷達の意見は聞くべきだと言うと一応は納得してくれたみたいで助かった。


 そして相談の結果、件の別荘を買い取る事が決定、そして俺たちの事は謎の豪商という設定でいく事になった。


 まぁ、これ程の美人どころやエルフ達を奴隷として抱えており、中古と言えど別荘を購入できる財力があるのだからその正体を探ろうとするものは出ても豪商を疑うものはそうそうないであろう。

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