第36話俺もそう思う

 そして俺は令嬢達からの好奇な視線にさらされながらも何とか耐え抜き、教室へと到着するのだが、その瞬間クロード殿下が俺達の前にやってくると何を勘違いしているのかブリジットを心配そうに見つめながら、何故俺と一緒に登校したのか問い詰め始める。


 その光景を見て俺は心の中で「いいぞもっと言ってやれ」とクロード殿下へ声援を送るのだが、そんな俺の声援も空しくブリジットは心底気持ち悪い物を見る様な目線をクロード殿下へ向けると「関係ない」と突き放すではないか。


 その時の、大切な存在に裏切られたような表情をするクロード殿下を見て俺は暢気に『ブルータスに刺された時のカエサルもこんな表情をしたのだろうか?』などと不敬にも心の中で思っていたのだが、次の瞬間クロード殿下の表情は怒りに満ち溢れ、そしてその怒りの表情のまま俺を睨みつけてくるではないか。


 何故? と一瞬思うものの、俺は嫌な予感がして背中から滝の様に汗が出て来る。


 もしかしてコイツ、つい最近まで自分に惚れていたと思っていたブリジットが急に近づかなくなり、気が付いたら他の男性と仲良くしているところを見て異性として強く意識し始めたのでは?


 押してダメなら引いてみろという昔からある戦法は、効果が絶大だからこそ昔から言われ続けているのだと俺は現実逃避をし、他人事の様に思う。


「貴様、スフィアだけでは飽き足らずブリジットまで傷付けるつもりか?どうやってブリジットを洗脳した?」

「いや、洗脳とかしてな──」

「俺に対して嘘を言うか? それがどういう意味なのか、理解して嘘を吐こうというのだな?」


 まぁ確かに自分でさえブリジットが俺になついてしまう経緯を知らない状態で今の現状を見れば、俺がブリジットを洗脳していると思うだろう。


 そしてそれが正義感が人一倍強く、普段から俺を毛嫌いしており態度でも隠そうともていなかったブリジットならば尚の事俺が何らかの方法でブリジットを洗脳したのだろうと思ってしまうのは、当然の流れだと自分自身そう思う。


「クロード殿下、これ以上私のご主人様を侮辱なさるのでしたら、例えそれがクロード殿下であったとしても許しません」

「なっ!? 何故だブリジットッ!! 俺はブリジットの事を思ってこの男を問い詰めているんだぞっ!? それにこの屑をご主人様と呼ぶのはどういう事だっ!! どう考えてもおかしいではないかっ!?」


 俺もそう思う。


 ブリジットは頭がおかしい。


 きっと彼女の頭の中身は筋肉で出来ているに違いないと思える程には。



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