第18話私の方が嫌な奴に見えた事だろう
そして、カイザルの行った悪事の数々を証拠と共に集めて学園長へ見せつけてやれば、さすがの学園長も首を縦に振らざるを得ないだろう。
いたって簡単な話だ。
どうせ三日もせずともカイザルが悪事を働く大量の証拠を集める事ができるだろう、その時の私はそう思っていた。
しかしカイザルは私が思っていた以上に狡猾で、切れ者であり、なかなか尻尾をつかませてくれない。
私自らカイザルが怒るように仕向けても、全て無駄に終わった。
ここだけ見ればカイザルより私の方が嫌な奴に見えた事だろう。
そんな、何の成果も得られない日々を過ごし、本日は演習の日。
当然カイザルと組みたがる者がいる訳もなく、そんなカイザルを監視しやすいように私は取って付けた様な言い訳で誘いを全て断り一人で行動する事に決めた。
そしてやはりというか何というか、カイザルは不審な動きをしていた。
それは良く観察しなければ分からないような些細な違いでしかないのだが、今日のカイザルは元婚約者であるスフィアへと不自然な程視線を向けている事がわかった。
そもそもカイザルの事を日々観察していた者など私ぐらいのものである為、この違いに気付けたのは私だけであるし、気付けたとしても日々観察しなければ『一人ボッチが恥ずかしいのか、何だかんだで婚約破棄をした事を後悔しているのだろう』ぐらいにしか思わないであろう。
しかしながら日々カイザルを観察していた私からすれば、カイザルはむしろ一人を好む傾向がある上に、スフィアを婚約破棄した事を後悔していたのであれば普段から未練がましい視線を送っていた筈である。
それに、今カイザルがスフィアに向ける視線は未練がましいと言うよりかは、寧ろスフィアの護衛を任された近衛兵の様に見える。
それがより一層私の目には怪しく映ったのであった。
◆
とりあえずこの遠征が始まってから常に『スキル』の一つである『マップ』を開き、護衛対象をスフィアに設定しながら、クラスの群から付かず離れずといった距離を保ちつつ移動する。
マップには今現在赤い点が三つ。
それもここまでの完璧な追跡を見るにかなりの手練れと見て良いだろう。
それこそ普段から人攫いをしているかの様な手練れ具合である。
それも、こういった森の中へ入った集団から、女子供が少し逸れたほんの一瞬を狙った人攫いを生業にしていると言われても不思議に思わない程には手練れている様に思える。
それでも、俺からすればまだまだ甘過ぎると言わざるを得ないのだが、そもそも『スキル』である『マップ』を持っているのと持っていないのとでは自転車と車のレースぐらいコチラが有利であるのだから当たり前の事であろう。
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