第83話だから俺のパンツは

「だ、誰ですかっ!? 私と高城君とのデートを邪魔する者はっ!? そもそも、私達が愛し合っていない、真実の愛じゃない、神に選ばれしカップルでもなければ未来を誓い合った仲でもないと否定するとはっ! 絶対に許しませんからねっ!!」

「え? あの……確かに『愛でもなんでもない』とは言ったわ。 けれども『真実の愛』だとか『神に選ばれたカップル』ですとか『未来を誓った仲』だとかは触れていないのだけれども?」

「私達の仲を否定するような事を言っているので、それらも言っているのと同じよっ!!」

「この人会話ができない人っぽいわ、麗華」

「ええ、そうみたいね、彩音」

「キィーーーッ!! やっぱり氷室麗華と天上彩音の二人だったわねっ!! 私と高城君との愛を邪魔する悪魔めっ!!」


 俺が心の中でお気に入りのボクサーパンツをどうやって高木さんから返してもらおうかと悩んでいると、聞き慣れた二人の声が後ろから聞こえ、そのまま高木さんと口喧嘩し始めるではないか。


 そしてその二人というのは案の定氷室麗華と天上彩音であった。


 いや、何してんだよ、こんな時間、こんな所で……いやまぁ高木さんの魔の手から助かったっぽいから良いけどさ。


 その事が地味に引っ掛かるのだが考えないように心の奥底に仕舞う。


「あら、高木さん。 あなた、そんな事を言っていいのかしら?」

「な、なんですか氷室さんっ? 脅しですかっ!? 残念ですけど脅しで屈する私では──」

「あなた、盗んだ健介君のパンツは先程言った黒のボクサーパンツだけではない事を私は知っているのですよ?」

「は、ハッタリですそんな事っ!! 現に実際高城君の今持っているパンツの枚数は変わっていないのを私は知ってますからっ!!」


 いや、なんで高木さんも麗華も知ってんだよ。


 そして高木さん……俺の持ってるパンツの枚数を知ってるという事は、さてはお前やってんな? 留守の日か夜中か分からないけど俺の家に不法侵入してんだろお前。 そうだよな。 あそこまでストーカー行為役満の人が家の中に侵入していないわけがないよなっ。


「ええ、そうですね。 確かに高木さんの言う通り健介君のパンツの枚数は変わっていないわ」


だから何で麗華まで俺のパンツの枚数を知っているんだよ……っ。


「ほらみなさいっ! 変わってないじゃないっ!!」

「けれども、パンツそのものはどうかしら? 高木さん、あなた健介君のパンツを一ヶ月に一回、全て新しいまったく同じパンツと総入れ替えして、古いパンツは持って帰っているでしょう?」

「ぐぬぅっ!? で、でもそれを私がやった証拠はないでしょっ! 勝手に決めつけないでくださいっ!!」


 あぁ、だから俺のパンツは一向に傷まなかったのか……なんかもうこれくらいでは驚かなくなった自分が怖い。

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