第82話ビンゴだろ?
「……っ」
そして、本日最恐(恐らく高木さん本人は最高だと思っている)の笑顔でそう言うではないか。
俺はというとあまりの恐怖にほんの少しだけ漏らしてしまたのは内緒である。
下は漏れたのだが(ほんの少し、漏れたと言っても多少、スポイトひと吸い分ぐらい)上の口からは悲鳴を漏らさなかった事は評価してほしいと思う。
「そ、そうなんですか……」
「そうなんですよっ。 なのでその日から私は高城君の事を付け回し、ではなくて未来の二人のために下調べをしつつ盗撮、ではなくて資料詰めをしたり、小物を盗んで、じゃなくてお借りして高城君の好みを調査してみたり同じ物を買っては私のと高城君の物を入れ替えて返したりしてたんですよ?」
なんだろう? 今まで話し相手がいなかったからなのだろうか? いや、それにしても口下手にも程があるだろう。
もう『付け回し』『盗撮』『小物を盗んで』って口に出ちゃってますからねっ!? これもうストーカーの役満じゃないですかっ!! お巡りさんっ!! ここっ!! ここにストーカーがいますっ!!
「暑い日も寒い日も朝も夜も雨の日も風の日も雪の日も台風の日も、大変だったんですからっ!」
え? なんで高木さんは褒めて欲しそうにコッチ見てるの? むしろ台風の日までストーカー行為をしていると知ってドン引きなんですけどっ!?
「しかし、これも全て高城君を愛すればこそですっ! 愛する高城君の事を思い浮かべれば天候など些細な問題でしたっ! そう、私たちの愛の前では台風ですら敵ではないのですっ!!」
いや、一方通行の愛なんですけど、その愛が重すぎて草も生えんわ。
「そして台風の日には偶然高城君の下着が風で飛んでくるという、神様からのプレゼントも頂いたのと同時に『逆境に負けるんじゃないぞ。 逆風など真実の愛の前では無力であるというのを見せつけるのじゃ』という神様のエールも感じ取る事ができたんですっ!!」
いや、とりあえず盗んだパンツ返せよ。
どうせあれだろ? 知ってんだぞ。
俺のお気に入りで一日中探し回った黒のボクサーパンツだろ?
そのパンツ以外で無くなったパンツはないからビンゴだろ?
それと共に、あの時は『どうせ彩音の悪戯だろう』と彩音を疑ってしまった事については、悪いのは盗んだ高木さんであって俺は悪くないと言いたい。
「それは違うわね、高木さん。 それは尾行に盗撮に窃盗と、れっきとしたストーカー行為よ。 愛でもなんでもないわ」
「そうよ。 そして、今高木さんが健介にやっているのは誘拐に監禁行為よっ!!」
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