第50話恥ずかしいような照れくさいような
しかしまさか彩音の口からわんぱく園に行きたいと出るとは意外である。
彩音の事だから、どうせ総合大型スーパー、イーオーンで買い物するから荷物持ちでもやらされるかと思っていた為俺としては有難いのだが、拍子抜けしたのも事実である。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「ふーん。 まぁいっか。 それにしても久しぶりだね、わんぱく園。 昔の頃を思い出さない?」
「あ、ああ。 そうだな」
というのも彩音が行きたいと上げたわんぱく園なのだが入場料無料の県が運営する公園であり、中には小さいながらも有料のアトラクションが複数あったり、無料で見れる小規模の動物園のようなスペース、そして様々な遊具があるスペースがあり、それらの真ん中には大きな池がある公園である。
この規模で無料で入場できるのはかなり有難いのだが、そこはやはり無料故に子供ならば遊べるが年を取ると少し物足りない、そんな施設であるとも言える。
その施設を高校生にもなって一番行きたい所に上げて来るのも正直意外であったと言えよう。
どうせなら動物園や遊園地など有料施設の方がこの歳にも成ると楽しめると思うのだが、それを言った所で暴力が飛んで来そうなので指摘はしない。
「あの頃は毎日が楽しかったよね……」
そう言う彩音は、ほんのりと頬が朱く染まっているように見えた。
◆
そして電車でわんぱく園の最寄り駅に降り、二人一緒に小学生低学年ぶりの道を歩く。
こうしているとなんだかあの頃に戻ったみたいで不思議な気分である。
「なんだかあの頃に戻ったみたいだね」
「そ、そうだな」
そして、そう思っていたのは彩音も同じであったらしく、俺は恥ずかしいような照れくさいようなむず痒い気持ちになった。
「ねぇ、せっかくだからあの頃のように遊んでみようよ」
「あの頃みたいね……」
あの頃みたいと言われても懐かしいとは思うものの二人の距離感は今とは全く距離感が異なるため躊躇してしまう。
そもそもあの頃のように彩音と接した瞬間に暴力が飛んできそうなので俺にとってはリアルに生き死にがかかっている為、安易に答える事など出来ようはずがない。
「ほらっ! 早く行こうよっ!」
「あ、こらっ! 分かった! 分かったから引っ張るなっ!!」
しかし彩音からすれば俺の葛藤など知る由も無く、当然同意したものとして俺の手を掴み入口へと駆けだす。
その姿は身体こそ大きくなっているものの正にあの頃の彩音のように感じてしまう。
しかし騙されては駄目だ。
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