第26話隠し撮り写真の方が大事なのだ
ぐぬぬぬっ。
コイツ如きに素の表情を見せてしまった事が無性に悔しい。
私の素の表情を見せるのは健介だけだと決めていたのに。
「べ、別にどっちでも良いでしょ? 貴女にそれが何の関係があるって言うのよ?」
「確かに、今の所はまだ無いわね。 でもコレからは関係無いこともないと思うのだけれども、それは貴女も薄々感じ取っているのではなくて? だから今日私をここに呼んだのでしょう?」
そういう麗華は『ねぇ、そうでしょう?』と表情で訴えて来る。
私は麗華のこの普段から澄ました表情が大っ嫌いだ。
「ええ、そうね。 貴女をここに呼んだ理由は貴女の言う通りよ。 健介は私だけのものなの。誰にも渡さな──」
「スマホに保存しているであろう健介くんの秘蔵写真の見せ合いをするのよねっ!!早く見せ合いましょうっ。 私はもう早くまだ見ぬ健介くんの表情を見たくて仕方ないのよっ。 特に幼馴染の彩音さんならば尚の事っ!!」
「──……へ?」
「……え?」
両者睨み合い、コレからキャットファイトが繰り広げられるかの様な空気感の中私は開口一番健介が誰の物か目の前の泥棒猫で分からずやの麗華に教えてやろうとした私の声を遮って、麗華が興奮気味に話して来るでは無いか。
どうやら向こうもやる気みたいだなと闘志を燃やそうと、健介は絶対に渡さないと決意を新たに再度私の思いの丈を告げようとした所で私の思考は止まった。
麗華が言っている事がよく分からない。
「え? は? どういう事?」
「それはこっちの台詞よ。 何で貴女と敵対しなければならないのよ?」
「それは健介が私の物──」
「──あのね、お互い催眠アプリという最低の道具を使ってしまった時点で意味無いって分からないの? もし私が貴女との戦いに負けた時、死ねば諸共精神で催眠アプリの事を包み隠さず全てを健介くんにバラすわよ?」
「ひ、卑怯な……っ!!」
「卑怯なって、貴女ね。 もし貴女が万が一私に負けた場合同じ事をするでしょう?」
「当たり前じゃないっ!!」
「だから私達が戦うのは意味が無い、寧ろお互いに自滅する未来しか無い。 だったら二人共闘しましょうっていう話だと私は思ったのだけれど、どうするの? 闘うのかしら? 私達」
悔しい。
悔しいけれど麗華の言っている事は間違いなく、二人が健介で争った場合共倒れ、それも一生健介に嫌われてしまうかもしれない程のダメージをお互いに受ける事は避けられない。
しかし、私にも小さな頃から健介の事を好きだという意地もある。
「私、今まで健介くんの学校生活中えちえち写真の隠し撮りをしてきたんですよ?」
「共闘しましょう」
「そう言ってくれると思ったわ」
そんな意地など犬に食わせてしまえ。
それよりも健介の隠し撮り写真の方が大事なのだ。
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