田舎魔拳士の学園生活
ムネミツ
第1話 アルン、嵌められる
「出たな暴れ牛、晩飯にしてやる!」
両の拳に包帯を巻き、肩や胸を革の部分鎧で守った短い黒髪の少年が
拳を脇に添えて腰を落とす。
「アルン、油断すんなよ!」
「応、パッチの兄貴も頼むぜ♪」
「任せとけい♪」
少年、アルンに声をかけるのは同じく黒髪をオールバックにした右目を黒い眼帯で覆った大剣を構える戦士のパッチ。
「アルンさん、結界魔法は張ったので被害を気にせず暴れて下さい♪」
紫のとんがり帽子にローブを着た赤毛の魔術師のミリーが張り切る。
「死んだらリザレクションするから頑張りなさいよ前衛共!」
司祭服を着た金髪ツインテールの美少女、アップルがブラックな事を言う。
「アップルちゃん、パパ悲しい!」
パッチが泣きながら、暴れ牛の群れに突っこんで行くのをアルンは追った。
アルンが所属する冒険者パーティー、パッチ団。
彼らが受けたクエストは、牧場の牛を狙うモンスター暴れ牛の討伐であった。
「乳牛ちゃんはお前ら肉共とは違うんじゃい、ストームブレ~~イドッ!」
パッチが風を纏わせた大剣を振るうと、無数の真空の刃が暴れ牛の群れを
襲った!
「ブモ~~~~ッ!」
悲鳴を上げて倒れて行く暴れ牛達だが、一頭だけ頑丈な黒い暴れ牛が残っていた。
「あいつが群れのボスか、俺の拳に宿れ太陽っ!」
アルンが呪文を唱えると、彼の拳に日光が超高速で集まり彼の拳が炎を纏った。
「喰らえ、プロミネンス・フィスト~~~ッ!」
突っこんで来るボス牛の勢いに負けじとアルンも突っこみ、炎の拳をボス牛の鼻面に叩き込む。
激しい音を立てて、ボス牛の頭部が爆散すると同時にアルンの攻撃の衝撃がボス牛の体を真っ二つにした。
「よっしゃ、やったぜ兄貴♪」
パッチに向けてサムズアップするアルン。
「ふゅ~、やったなアルン♪ んじゃ、ドロップ品回収するぞ♪」
クエストを達成したアルン達パッチ団は、倒したモンスターの角や食った物などを
回収する。
「はい~~っ! この牛何で、宝石とか食べてたんですか!」
ミリーがルビーなどの宝石類を拾って驚く。
「動物系のモンスターって金貨とかも食べちゃうからね」
アップルも暴れ牛の腹をナイフでさばいて、ドロップ品を探す。
「おわ! このボス牛、何か籠手とか食ってたぜ兄貴」
アルンがボス牛の残骸から銀色に輝く高そうな籠手を見つける。
「ああ、それはお前が装備しとけ」
パッチが籠手はアルンの物だと宣言する。
「兄貴は何か見つけたの?」
アルンがパッチに尋ねる。
「ああ、俺は報酬金で良い装備を買うから籠手はお前の現物支給♪」
パッチの言葉にアルンはずっこけた。
「半分は冗談だ、報酬はきちんとアップルちゃんに渡して分配するって♪」
パッチが笑ってアルンの背中を叩いた。
それを見て笑い出すミリーとアップル、つられてアルンも笑ってしまう。
メンバー達が笑い合える関係、それが冒険者パーティーパッチ団だった。
街に戻ったアルン達は冒険者の酒場で夕食を取っていた。
「クエスト達成、おつかれちゃ~ん♪」
パッチがエールのジョッキを掲げて叫ぶ。
「兄貴、俺もエールが飲んでみたい」
オレンジジュースのジョッキのアルンが呟く。
「大人になるまで我慢しろ、パッチ団は二十歳未満には飲ませません♪」
酔っ払いながら語るパッチ。
「あんたまで酒飲みになったら、パーティー破産だから駄目!」
会計係も兼ねるアップルが突っ込んだ。
「無理して飲まなくても楽しいですよ~♪」
炭酸ジュースを飲むミリーもアルンを窘める。
「わーったよ、いただきます」
アルンが挨拶をすると皆もいただきますと、食事を始める。
野菜のサラダに暴れ牛のステーキにパン類と普段よりちょっと良い食事をアルン達は楽しんでいた。
「そういや皆、次の依頼の話だが家に直接使命が来た」
パッチが思い出したように話を振る。
「すげえ、俺は受けたい♪」
アルンが呑気に、装備した銀の籠手を嵌めた手を上げて喜ぶ。
「私も報酬が高ければ受けるわ♪」
アップルがまず報酬を気にする。
「同じくです、新しい魔法の杖が欲しいので~♪」
ミリーも同意する。
「良し、じゃあ内容を話すぞとある貴族から家出息子を探してくれって依頼だ」
パッチが内容を語った。
「家出人探しか~? 地道に探すしかないかな?」
アルンは銅依頼をこなすかを考えた。
「そうね、成功報酬だけでなく活動資金も欲しい所ねパパ?」
アップルがパッチに尋ねる。
「ですねえ、その方が生きているかも調べないといけませんし」
ミリーも悩み出す。
「ああ、細かい心配はしなくて良いその家出息子ってのはアルンだからな♪」
パッチが語ると同時に、ミリーとアップルが動き出す。
「スリープ!」
「ゴッドバインド!」
アルンは突然、眠らせる呪文と動きを止められる呪文を仲間達から掛けられてダウンした。
「……うう、ここは! 実家の俺の部屋じゃねえか!」
アルンが目覚めたの場所は、綺麗に片づけられた私室のベッドの上。
彼にとっては二年ぶりに見た、見知った天井であった。
「マジかよ皆、酷いぜ」
パーティーの仲間に嵌められたと気付いたアルンはため息をついた。
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