有名ギルドをリストラされたので新米冒険者のサポートに回り最強を目指そうと心に決めた聞き馴染みのないレアスキル“重力操作”の男!

モグラ戦車長

 第一話 急な人事でリストラに遭いました!

「それでは、最後の者を発表する! “ハマトラ”! いま呼ばれた者たちは……今日限りでこのギルドを去ってもらう! ――そうだ! 有り体に言えばだ! いままでご苦労であった――コレにて解散!」


 ハマトラは、まだ日の昇りきっていない早朝にリストラされた。無職。圧倒的無職。“早起きは三文の徳”というが三文どころか食い扶持ぶちを失った。


 さらに言えば、物語の開始二行で。ハマトラ、作者を恨まないでと願う。


 そもそも彼のスキルは“重力操作グラビティー・マスター”という聞き馴染みのないレアスキル。

 最前線には決して赴かず、常に最後尾から“テニスコート”ほどの範囲内で支援するといったスキルである。


 しかしながらハマトラは大いにギルドで役立っていた、と思う。

 なぜならば最強と名高い元所属ギルド『神のかみのほこ』の、弱小戦闘員たちからすれば、気兼ねなく相談できる的存在であり、面倒見もよく人望も厚い。敬意を抱く者も少なからずいたからにほかならない。


 彼は何度となく新人及び中堅、最前線の役職者までもサポートしてきた。

 そんな男がきしくも、ギルド拡大のためにお払い箱の宣言を受けるのだった。



 ハマトラという男は身の丈、二〇〇センチ前後で、中央部に文字が記載された細く長い布を額に巻き。

 魔界の闇を圧縮したような、漆黒の長い詰襟つめえり外套がいとうを羽織り、両手には天使の羽を彷彿とさせる、眩しいほどに純白な手套しゅとうをし。


 腹部から胸囲にかけては、粗雑に縫い合わされた襤褸切ぼろきれを巻きつけ、少しゆったりとした黒い洋袴ずぼんをはき、足元は分厚い鋼鉄製で、T字型の履物。

 

 さらには、鍔があり反りのある刃物を帯刀し、長くも短くもない黒光りする髪を後方に流している。

 履物の高さや頭髪までいれると身の丈は、二三〇センチ前後にもなる、超大男だ。


 陳腐な言い方が許されるならば、一九八〇年代半ばに少年誌で流行った、“魁!!○塾”に出てきそうなキャラと表現してもなんら、違和感のない出で立ちである。

 


 そんな男が街近郊の、丘陵の草原で茫然と仰臥し空を仰いだ。

 すると“ふつふつ”とわき上がるものがあった。


「最強がなんだ! あのギルドを絶対見返してやる!」

 リストラしたことを後悔させてやろうと心に決めるのであった。


 だがそう簡単に物事が進むほど世の中は甘くない。

 そうした事を理解しながらも、ハマトラの怒りは収まらなかった。


「なぜオレがリストラに!? なぜあいつが! んんんんんー! 胸糞悪い!」

 

 そんな悪態を怒り心頭で呟いてると、

「きゃぁーー」と言う、甲高い女の声が聞こえてきた。


 ハマトラは、声が聞こえると瞬時に体を起こし、耳を研ぎ澄ます。

 すると後方数十メートルで発していることがわかった。


 駆け付けると、見るからに新人の冒険者が雑魚モンスターに苦戦している。

 逢ったこともない冒険者を助けるのは、正直、しゃくではあったが自然と体が動いていることに自ら驚いた。


 コレはまさに自身の投影!? とハマトラは思いつつ“戦闘区域”に入り込み、勝手に“重力操作グラビティー・マスター”を発動した。

 すると苦戦し傷ついていた冒険者が、次第に息を吹き返すのであった。




 ☆☆☆☆☆


 次回

「エッ!? マジぴよ!? スッか!? パイセン!」



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