狂気へと
シヨゥ
第1話
仕事が忙しく、私人としての時間がない。時間を捻出することは睡眠時間を奪うことに直結する。それは時間の総量を目減りさせることに他ならない。
欲しても欲しても時間の総量は変わることなく、成す術なく会社に買い上げられる。時間の所有権を買う術はないものか。時間が買えるなら安いもの。そう考えれば財布の紐も緩む。と思ったら大間違い。使う術を考える時間すらないのだ。
ただ銭が貯まり、持ち主とは反対に財布だけが肥え太っていく。まるで持ち主の生気を食う妖怪のよう。あるいはペットか。ただ餌の銭は旨いかと聞けども返事はない。
財布に語りかけることが増えていく。周りは壊れただの言う。それがなんだ。もうこいつを太らせる以外に何も残っていない。可愛げのないこいつも愛でてやれば可愛いく見えてくる。なら愛でてやらねば。そうしなけりゃ気が狂う。
狂う? ああ狂っているのか。誰が狂わせた。誰だ。誰が。誰だ。
狂気へと シヨゥ @Shiyoxu
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