思ったことを本と絡めて
郷野すみれ
知ることって大事
今回は「知ることって大事だな」という話です。
帰省の時に交通系ICカードをリュックの右側に配置しながらふと思ったんです。
「改札が人の右側にあるのはやっぱり右利きの人が多いから?」
思いつきで書いているので、本当かどうかはわかりません(と言いつつ調べたら当たっていました)。そんなことを思った後、「じゃあ左利きの人は?」と疑問に思ったのです。
仮に右利きの人が使いやすいからという理由で右側に改札のピッとやるところや切符を入れるところがあるとしたら。左利きの人は約5人に1人と言われています。割合にして20%。その人たちのことを無視していることになります。大きめのターミナル駅になんかは改札口がいくつもありますからそのうち1つや2つほど左側に改札の切符を通すところなどがあってもいいはずです。
と、ここまで読んだみなさんは思ったかもしれません。
「いや、もし仮にそういう理由だったとしても、左側に改札があったら場所を取るし、非効率的だろう」と。
右利きがマジョリティだから左利きのマイノリティ(と呼ばせてもらいます)の人々が効率という名で切り捨てられるのです。それがたとえ5人に1人という割とメジャーな少数派だったとしても。
で、私が何でこんなことを思ったか。その理由を今から回想します。
私が左利きについてちゃんとした意味で知ったのは中学の部活でした。当時の私が使っていたハサミは、スティックタイプで持ち手を引き出すタイプのハサミでした。それを見た部活の左利きの友達が
「私も持ってるよ」
と話しかけてきました。
「これ、両刃になってるから左でも使いやすいんだよね」
「え、え??」
気になった私は彼女にもう少し詳しく話を聞きました。
「普通のハサミだと右利きの人が使うのを想定しているから使いにくいの。左利き用もあるっちゃあるんだけど、可愛くなかったり持ち運びは想定していなかったりするんだよね。それに左利き用だと友達に貸せないし。だからこれはすごくいいなと思ってる」
試しに部室にあった普通のハサミで左手を使ってそこら辺にあった紙を切ってみると利き手ではない方を使っているという理由の他にもハサミが使いづらい気がしました。
多分その時から私の世界の見え方が少し変わったと思います。
世の中に左利きの人がいるということを知っている見え方に。これから先、そのことを知っていることで役に立つこともあるかもしれません。
知るって大事ですね。
私の仲の良い友達に食べ物のアレルギーを持っている子がいます。ある日その子と話している時、その子はとあるパン屋さんによく行くと言いました。私はそのパン屋さんは特段好きでもなく嫌いでもなく普通だったので、理由を聞いてみました。
するとその子はこう答えました。
「あのパン屋さんはアレルギー成分をわかりやすく表示しているから」
確かに!私は目から鱗が落ちる思いでした。それまで何度もそのパン屋さんには行っていましたが、そういう視点で見たことがなかったので本当には気がついていなかったのです。
その話をしたのは中学か高校でしたが、今もスーパーや外食に行くと「このアレルギー成分の表示はわかりにくいな」などと頭の片隅で思っています。
そして、知っているから思えることだと勝手に考えています。知るって大事ですね。
世の中にはマイノリティの方々もいらっしゃいます。知ることが大事と言っても私たちの周りに都合よくいるかと言われるとそうでもありません。では、どうやって知るか、知ろうとするか。それはやはり本を読むということが一つの解決策なのではないでしょうか。
有川ひろさん著の「レインツリーの国」もマイノリティについて知れる本だと思っています。もちろん、この本は恋愛小説としても楽しめますよ!(ここから先、ネタバレあります)
一言で言うと、女主人公は中途難聴者です。レインツリーの国は彼女が1人の女性として人に向き合っていく様を丁寧に描くと同時に私たちに聴覚障がい者の現実もわかりやすく教えてくれます。
小説を読むことで彼女の思考をなぞり、そういう人が世の中にいるのだと知ること。それが大事なのではないかなんて思ったりします。そしてその手段に小説というのは最適なのではないかな、とも。
知ることでピリピリせずに優しくなれる、そんなことも多々あると思います。
青柳碧人さん著の「国語、数学、理科、誘拐」にも私の拡大解釈かもしれませんが、それと似たようなことを言っているのではないかと感じる、私の心の支えとなっている一節があります。今回のエッセイを締めようと思います!
「勉強すると、人にやさしくできるんだって」
きっと知識を蓄え、知ることで必要以上に腹が立つことがなく優しくなれるのでしょうね。
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