おれは、たぬき。だきまくらだ。

@tanuki0729

第1話 おれは、たぬき。だきまくらだ。

たぬき「よっ、みんな。おれはたぬき。だきまくらだ。よろしくな!」


おし「みなさん、初めまして。このお話はたぬきの抱き枕の持ち主である、わたくし、“おし”の人生を、共に過ごしてきたたぬきの目線で描いています。お話し好きなたぬきのおしゃべりに付き合ってあげてください。」


たぬき「さきにいっとくぞ、おれはかんじってやつがわからねぇ。ひらがなしかわかんねぇんだ。よみにくくてごめんな!」


おし「そうなんです、たぬきは漢字を読めるんですが、書けないんです。まぁ読めるだけたぬきにしては賢いのでしょうかね。」


たぬき「かんじはかけねぇけど、おれはすごいんだぞ。おれのはなしをぜんぶききおわったころにわかるさ。まぁゆっくりはなすからきいてくれよな!」


おし「みなさん、薄々お気づきかと思いますが、このたぬき、話し方がちょっと生意気なんです。ちょっとじゃないかもしれないですが。でもそれがまた可愛いんですよね。子どもだと思って優しく聞いてやってください。」


たぬき「さて、まずはおれのことをしってもらわねぇとな。おれは、だきまくらってゆうしごとをするためにつくられたんだ。ぬいぐるみじゃねぇぞ、だきまくらだ。ひょうごけんしゅっしんらしい。しんちょうは60せんちくらいだ。かおが20せんち、からだ40せんちだ。いいすたいるだろ。でもな、おみせにならべられてずっとひましてたんだ。まわりのほかのどうぶつたちはどんどんいなくなって、おれはずっとひとりでならべられてた。いつのまにかおれはうれのこりのせーるひんになってたんだ。かなしかったなぁ。そしたらあるひ、おしのおかあさんがかってくれてな、おしといっしょにくらすことになったんだ。あのひのことはいまでもわすれねぇ。ほんとにうれしかった…。」


おし「僕が10歳ぐらいの時でしたかね、ベッドの上に突然たぬきの抱き枕が置かれてたんです。当時お父さんが抱き枕を使っていたのが羨ましくて自分も欲しいと言っていたんです。そしたら、子供用の小さ目のたぬきの抱き枕をお母さんが買ってきてくれたんですよ。たぬきが好きなんて気持ちは全くなかったので、なんでたぬき?って思ってたんですけど、ただの抱き枕としてたぬきということは気にせず使っていました。でも、たぬきにとってはこんなにも嬉しい1日になってたんですね。でも、今となってはほんとに家に来てくれてありがとうって僕も思います。」


たぬき「おしとのであいから18ねんたってな、おれはひっこしを3かいもけいけんしていまはとうきょうってとこにいるんだ。ひっこしのたびにすてられねぇか、ひやひやしたけど、なんとかずっとつれてきてもらった。だんぼーるにつめこまれておしつぶされてなんにちもまっくらのなかまたされるのはゆるせねぇけどな!おれもかばんにいれていっしょにいってくれればいいのにな!まぁ、わがままゆうとすてられるかもしれねぇからおとなしくがまんしてやったけど。この18ねんかんおしとくらしてきたけど、にんげんっておもしろいな。たぬきもいいけど、にんげんもやってみたいとおもったぞ。にんげんのみんなにいろいろきいてみてえことあるからさ、この18ねんかんふりかえりながらしつもんさせてくれるか。そのまえにちょっとさむいから、おし、だんぼういれてきてくれ。」


おし「なんか僕とたぬきの人生を振り返りながらみなさんにも聞きたいことがあるみたいですね。そして暖房入れてこいだとか。生意気ですみませんね。でもこのたぬき、たぬき目線でたまに鋭いことや面白いこと言ってきたりするんですよ。たまーにですけど。だから、お話きいてあげて、みなさんも少しだけ一緒に考えてあげてください。でも18年分って…長くならないか心配ですけど。


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