天敵無双の改造人間~俺のマスターは魔王の娘
アニッキーブラッザー
第一章
第1話 序章・新人類
いずれは伝説となるはずだった異種族間の戦争は中断された。
「ついに……この地までやってきたか……新人類……」
魔族と獣人が生息する『ネーデスフィア』。
遥か昔から続く両種族との間で繰り広げられた戦争が決着つかずのまま中断されたのは、どちらの種にも属さない『新人類』が出現し、世界全土に猛威を振るったからだ。
「それまでだ、『新人類・キカイ』共がァ! ここから先は、この獣と魔の連合守備隊が一歩も通さぬ!!」
新人類は突如としてこの世界に現れた。
ルーツは不明。
種族は不明。
どのような歴史や進化を辿ったのかも一切不明。
ただ突然、この世界に何百、何千、何万もの数で現れた。
その名は『新人類・キカイ』。
「同じ顔をしたピカピカ髑髏共がゾロゾロと!! だが、人形のようなそのツラ……破壊獣とまで言われた象人族の長たる、ワシの突進で全て吹き飛ばしてくれる!!」
特徴1:キカイは常に集団で現れる。
特徴2:キカイは全員同じ顔をしている。
特徴3:キカイは鉄の髑髏のような顔をして、肉体が全て鉄のようなものでできている。
「ガハハハハ! どうだ、ふっとばし……ば、バカな! け、ケロッと起き上がっ……」
特徴4:キカイはダメージを感じない。中途半端な衝撃を受けてもすぐに起き上がる。
「破壊獣、下がっていろ! ここは魔王軍の百人隊長であるワシの剣を、こやつらの身に刻み込……なっ、わ、ワシの……ワシの剣が折れた……」
特徴5:刃物を通さぬ硬度な身体
「くっ、パワーでも剣でもダメなら……魔法で燃やし尽くしてやる! 灼熱の業火に包まれろ! ファイヤーボールッッ! ……え……そ、そんな炎に包まれても動いている!?」
特徴6:炎や水などの魔法を受けてもビクともしない体。
「障害ヲデリート。バルカン」
「て、手の形がかわ……なんだ、その筒のようなものはッ!? それは、『魔砲銃』では……いや、ちが……ッ!?」
特徴7:キカイは戦闘中に体が変形する。
「掃射」
「「「「ッッ!!??」」」」
特徴8:その攻撃力は魔も獣も数も関係なく一瞬で肉片に変え、血の雨を周囲に降らせる。
「い、いや、し、しにたく、な……た、たすけて! お、お願いします、わたし、何でもします! ね? もし助けてくれたら、私の体を好きな―――」
「デリート」
「ぎゃぷ!?」
特徴9:戦争における略奪や凌辱や性に興味を示さない。ただ殺すだけ。
「キカイの方々、お互いに武器を収めて一度話し合いをしませんか? 私はこの国の大臣です。もしあなた方に要求があるのでしたら―――」
「デリート」
「がぴゅっ」
特徴10:キカイは言葉を発するが、会話などの意思疎通は不可能。
「あ、あぁ、どうか……どうか、慈悲を。この孤児院には戦争で家族を失い、心に深い傷を負った子供たちが居るのです。この子たちにどうか――――」
「デリート」
「ぎゃぐあ!?」
「い、いやあああ、神父様ぁ! や、やだ、たすけて、たすけて……たすけて、お母さ――――」
「デリート」
特徴11:一切の慈悲もなく、女子供も容赦なく皆殺しにする。
世界に突如現れ、魔も獣も関係なく容赦なく虐殺を繰り返すキカイたち。
その脅威はそれまで世界全土の種族同士で行われていた戦争も中断し、魔族の魔王、獣人の獣王、憎しみ合っていた者たちが皮肉にも手を組んで対抗しなければならないほど、世界は追い詰められていた。
しかし、世界は未だに明確な打開策も設けられぬまま、人々は戦争の時以上の恐怖に怯えて暮らしていた。
日々、散っていく命。
失っていく、村、街、国、そして種族。
中にはこの事態を、争いをやめなかった世界の人類に対する神の天罰と唱える者もいた。
そして、その論を否定しない者たちも多かった。
それほど圧倒的な戦力差。
抗うことができない神の力。
世界は滅びるしか道が―――――
「そうはさせません!」
「やめろおおおおお!」
だが、神すら予期せぬ存在が抗いを見せる。
「行きましょう、『アークス』! 私たちの鋼鉄より硬い絆と力でこの絶望を穿ってやろうなのです!」
「ああ、一緒に行くぜ、『クローナ』! みんな!」
「「応!!」」
新人類に風穴を開ける、新勢力たちが世界に現れたのだ。
「穿ってやる! デリートデリートうるせえテメエらに! 超金属チェンソーッ!! 抉り尽くしてやるだけじゃ足りねえ、刻んでやる!」
男の鋼の腕は変形し、あらゆる衝撃や武具や魔法を弾くキカイたちを容易く刻んでいく。
「んもう、アークスは一人で張り切りすぎです! 今の夫婦は共働きが基本なのです。待っているだけの女にならないために、私も一緒に撃ち抜くのです!」
「デリ―――」
「ふふん、どんなもんだいです!」
少女は両手に持った輝く二丁の銃でキカイたちの海を華麗に舞い、キカイたちの頭部、関節を次々と撃ち抜いていった。
「さぁ、アークス! キカイをいっぱい倒して、今日もいっぱい『喰べるのです』! そして『この戦いが終わって、私にチューしたいと思ったら、好きなだけ私にチューをするのです』!」
「ハイ! 了解しました! いっぱいマスターにチューしたいので食べて戦ってチューします! ……って、ヲイ、クローナ! また俺にそんな『まわりくどい命令』を……」
「ふふ~ん、楽しみです! 『命令』ではなく、アークスが『自分の意思』でチューしてくれるのが♪」
決して人類では勝つことのできないと言われていた新人類を相手に激しく無双する二人。
いや……
「ふふふふ、相変わらずイチャイチャ妬けてしまうのう。しかし、儂も後れは取らないようにせねばならぬな。武人としても、女としてものう。おぬしもそう思うであろう?」
「微塵も思いませぬ。むしろ救世主様がまた姫様とイチャイチャがどうとか、羨ましいとか、可愛がりたいなど微塵も思いませぬ。小生の想いはただ姫様の幸せのみ」
彼ら……
「全員まとめて――――」
「かかって―――――」
「「来い!!」」
彼らこそが、この世界に現れた天敵である新人類キカイの天敵となる……
「私の!」
「俺たちの辞書に!」
反逆者たちであった。
「「「「不可能の文字はないッッ!!!!」」」」
――あとがき――
初めまして。第7回カクヨムWeb小説コンテスト用に書いてみました。もしよろしければフォローや評価などしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
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