第13話

「リックさん、まず初めに言っておきますが、フランクリンさんは私の協力者です。そして、彼のほかにもまだ、私には協力者がいます。彼らのおかげで、私に殺し屋を差し向けたのがあなただと分かりました」


「なぜだ……、なぜ私だと分かったんだ。フランクリンが協力者だとしても、彼はこの屋敷に来てから、一切外部との連絡を取っていないんだぞ。お前にどうやって、私が殺し屋を差し向けた犯人だと伝えたんだ!?」


「いえ、フランクリンさんは私に何も伝えていませんよ」


 アリスはさらりと答えた。


「だったら、どうやって……。こんなの、ありえない」


「言ったでしょう、ほかにも協力者がいるって。フランクリンさんの部下であるエドワードさんとフレデリックさんが、その協力者です。フランクリンさんが、あなたに私の居場所を教えて取引したように、彼らにも、ほかのご兄弟の屋敷に行ってもらって、同じように取引してもらったのです。ちなみに私の居場所は嘘の部屋番号を伝えてもらいました。私はあの宿屋の別の部屋に移動していたのです」


「だからお前は無事だったというわけか……。そして、私が差し向けた殺し屋は、待ち伏せていた兵に捕まったのだな? しかし、奴は口を割らなかったはずだ」


「ええ、彼は口を割りませんでした。まあ、想定内でしたけれど」


「それなら、どうやって私を犯人だと突き止めたんだ!?」


「それはですね、殺し屋が入ってきた部屋番号から特定しました。さきほど、嘘の部屋番号を伝えてもらったと言いましたが、実は三兄弟のそれぞれに、違う部屋番号を伝えたのです」


「違う部屋番号だと?」


「ええ、ベンさんには301号室、トニーさんには302号室、そしてリックさん、あなたには303号室と伝えました。つまり、ベンさんが犯人だった場合は、殺し屋は301号室に現れ、トニーさんが犯人だった場合は、302号室に殺し屋は現れることになります。しかし、殺し屋が現れたのは303号室でした。ご存知の通り、あなたに伝えた部屋番号です。だから、あなたが犯人だと分かりました」


「まさか、そんな方法があったなんて……」


「ちなみに、殺し屋の人も、あとで口を割ると思いますよ。だって、あなたが逮捕されたら、約束の報酬が支払われませんからね。忠誠心ではなく、お金だけの関係ですから、あなたを庇う義理は彼にはありませんからね」


「何もかも、私は失敗したというわけか……」


 リックは絶望の表情で、兵に連行されて行った。


「これで、問題はすべて解決されたね」


 ライアン王子が部屋に入ってきた。


「ええ、なんだかとても疲れました」


「一緒に王宮に帰って休もう」


「え、私たち、婚約破棄したから、赤の他人ですよね?」


「え……」


「冗談ですよ。一緒に帰りましょう」


「ああ、びっくりさせないでくれ。もちろん、婚約破棄は、破棄するよ。さあ、一緒に帰ろう」


 アリスとライアン王子は笑い合った。

 一時はどうなることかと思ったが、アリスは再びライアン王子と一緒にいられる喜びをかみしめていた。


「では、行きましょうか」


 二人は、並んで歩き始めた。

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私のことを追放した王子が、なぜか全力で追走してきます 下柳 @szmr

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