第11話

 トッド・ヘルドは、国境近くの小さな町に来ていた。

 仕事の依頼があったからだ。

 仕事の内容は、ただ、指定された人物を消すだけ。

 今回のターゲットは、アリス・ターナーだ。

 

 依頼人からは、既に多額の前金をもらっている。

 仕事が成功すれば、さらに報酬をもらえる。

 もし失敗しても、依頼人のことを黙秘すれば、保釈された後に報酬がもらえる。

 なので万が一失敗しても、トッドは依頼人のことをしゃべるつもりはない。

 すべては金のためだ。

 抹殺が成功しても失敗しても金がもらえるのだから、美味しい仕事である。

 もちろん、失敗するつもりはないし、今まで依頼を完遂できなかったことはない。


 トッドは町を歩いた。

 目的の場所までもう少し。

 さて、ここか……。

 トッドは宿屋に到着した。


 アリスは、この宿屋の303号室にいる。

 依頼人からの情報で、間違いないとのことだ。

 トッドは宿屋に入った。

 そして、フロントで受付を済ませ、部屋に向かった。

 もちろん、自分の部屋ではなく、アリスのいる303号室だ。

 目的の部屋の前に着いた。


 この扉の向こうに、アリスがいる。

 トッドは素早くピッキングして、カギを開けた。

 そして、部屋に入った。


 部屋は真っ暗だ。

 ベッドに目を向けると、上布団が膨らんでいた。

 アリスは寝ているようだ。

 まあ、こんな時間なので当然だろう。


 トッドは、懐から刃物を取り出した。

 そして、そのふくらみに向けて振り下ろした。

 確かな手ごたえがあった。

 しかし、同時に違和感もあった。

 トッドは布団をめくった。

 布団のふくらみは、アリスではなく、敷き詰められた枕だった。


「どういうことだ……」


 トッドは思わず呟いていた。

 何か、嫌な予感がする。

 額から汗が流れていた。

 すぐに、この場を離れた方がいい。

 そう思って部屋から出ようとしたその時……。


「動くな! 今すぐ武器を捨てて、両手を上げろ!」


 たくさんの兵が部屋に押し寄せてきた。

 一瞬で囲まれ、逃げ道はなくなった。


「くそっ! どうなっているんだ……」


 トッドは武器を捨て、両手を上げた。

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