第10話

「フランクリン、まさかとは思うが、君は録音機を持っていないだろうな?」


「え……」


 彼の言葉に、フランクリンは驚いている様子だった。

 

「今の話を外部に漏らされたら、私は終わりだ。悪いが調べさせてもらうぞ」


 彼はフランクリンが録音機を持っていないか調べた。

 しかし、持っていないことが分かった。


「あの、どうか、私の話を信用してください。私は、嘘はついていません」


「いいだろう、君を信じよう」


 彼はそう言ったが、まだ警戒を解いたわけではなかった。


「あの、それで、報酬の方は……」


 フランクリンが言いにくそうに申し出た。


「ああ、いいだろう。後日、充分な金を君に用意する」


「ありがとうございます! あの、それでは、今日はこれで失礼します……」


「待つんだ、フランクリン」

 

 彼は、部屋から出て行こうとしたフランクリンを呼び止めた。


「……何でしょうか?」


「情報を提供してくれたお礼に、今日は君をこの屋敷でもてなすよ。もちろん、金はきちんと後日渡す」


「えっと、それは……」


「どうした? 何か、困ることでもあるのか?」


「い、いえ。それでは、お言葉に甘えて……」


 フランクリンは渋々と言った様子で答えた。

 彼はフランクリンの言葉を聞いて、笑みを浮かべた。

 万が一、フランクリンがアリスと協力しているとしたら、このまま帰すと厄介なことになる。

 アリスのところに戻ってさっきの話を伝える手筈になっているかもしれない。

 この屋敷にとどめて、外部に連絡を取れないようにするのが一番いい。

 執事たちに見張らせて、屋敷から出て行ったり、電話をしたりしないように監視させよう。

 

 そのあいだに、アリスのところへ殺し屋を差し向けることにしよう。

 そしてそのあと、フランクリンも消してもらえば完璧だ。

 彼は執事を部屋に呼んだ。

 そして、フランクリンを屋敷でもてなすように頼んだ。

 もちろん、こっそりと監視することも伝えた。


 フランクリンは執事に案内され、部屋から出て行った。

 それを見届けたあと、彼は殺し屋に電話をかけた。


「私だ。ターゲットの居場所が分かった。国境近くにある小さな町の宿屋の、303号室だ。確実に消せ」


 これで、完璧だ。

 ありえないとは思うが、万が一フランクリンとアリスが協力しているとしても、フランクリンは屋敷から出られないので問題ない。


 彼は、すべてが順調に進んでいるので、笑みを浮かべていた。

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