第2話
「待ってくれ!」
「嫌です、来ないでください!」
アリスは、追いかけてくるライアン王子から逃げていた。
馬車で追いかけられると勝ち目はないので、森の中へ入り、馬車が通れない細い道を走っている。
後ろを振り返ると、ライアン王子も全力で追いかけてきていた。
「頼む! 待ってくれ! これでは僕が君を付け回しているみたいじゃないか!」
いや、みたいというか、まさに付け回されているわけだが、状況が分からないだけに、アリスの選択肢は逃げる以外になかった。
そう、たとえば、追放ではなく、処刑に変更になったから連れ戻しに来た、とかそういう可能性だってあるのだ。
愛しのライアン王子に会えたからといって、油断するわけにはいかない。
アリスは必死に走った。
「止まるんだ、アリス! 話だけでも聞いてくれ!」
「そう言って、私が止まったところを捕まえて、処刑するつもりなんでしょう?」
「そんなことしない! 頼むから止まってくれ!」
「話があるのなら、走りながらだってできるはずです! 私は止まるつもりはありませんよ!」
アリスは息を整えた。
まだまだ体力には余裕がある。
「わかった……。それじゃあ……、僕が……、はあ……、はあ……、君のことを……、はあ……、追放した……、理由を話そう」
ライアン王子は息が切れて、話すのも大変そうだった。
しかし、アリスは止まらなかった。
捕まったら何をされるかわからないからだ。
「その理由は……、はあ……、はあ……、はあ……、はあ……」
あとの言葉が続かない。
ライアン王子は体力の限界が近いようだ。
振り返って王子の様子を見ると、彼は足を止めて肩で息をしていた。
しかし、アリスは足を止めなかった。
捕まったら何をされるかわからないからだ。
「本当は、僕は君のことを愛しているんだ!」
ライアン王子のその言葉を聞いて、アリスは足を止めた。
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