こころの旅と記憶を辿る 短編集

さくらもち

第2話 今日から図書委員

 町の図書館へ行く。持ち物はカフェ・オ・レとこの間買ったばかりの「10代のための読書地図と本の道しるべ」、それからお菓子これは大事。車で行く。着いたら先ずは車の中でお菓子を食べて、準備万端。持ってきた本は置いていく。


 ちなみに、私は年に3冊読めば良い方、と言う経歴の持ち主。とある本の影響を受けて、読書を始めた。さてさて、図書館の入口へ。ガラス張りの自動ドアが開く。館内は全体がクリーム色で棚は無地の木製。何を読もうか決めてなかったのでロビーの中央で一旦停止。


「端から行こう」


 そう思って近づいた本棚には、文庫本がみっちり詰まっている。高さは2m以上ある。一番上から見たくて二段ある踏み台を引っ張ってくる。ゴロゴロゴロ。


「読むぞー!」


 タンタン、と勇ましく登る。もうこれだけで読書家の仲間入りした気持ちになる。普段本を読まない人間がさもわかったふりをすると滑稽に見えやしないかと若干辺りを気にする。登り切ったところでフクロウ時計の様に目を左右に動かした。見えてはいるけど題や著名を読んでいられない。文字が沢山並んでることに目が回りそうになり、さっさと降りて自分に身近な本が無いかと近くを見ると、魅力的なタイトルが目に飛び込んで来た。


「小さい時から考えてきたこと」


著者は、トットちゃん。そう、黒柳徹子さん。

私にとって黒柳徹子さんはトットちゃんなのだ。


「きっと面白い、これにする!」


人が周りにいると本が読めない私。でもちょっと読んでみたいよね。自分の気持ちを確かめる。机のある場所へ行く。机にはコロナ禍での御作法が書いてある紙が貼られている。座って読んでいると新聞を持ってきた人が直角の位置に座った。大きな紙をめくる音が聞こえるが、一緒懸命読むことに集中する。だんだん音が気にならなくなってきた。何故ならトットちゃんが楽しいから。トットちゃんは、私の味方。


 鬼ごっこをしようとした子供を嗜めるお母さん。素直に「はい」を言う子供たち。他の人もここで読みたいかもしれない。私も、と、席を立つ。近くの棚を何となく見ると、「小説ほど面白いものはない」山崎豊子著 が目に留まった。


「これにする!」

「欲張らない、この2冊を2週間で読んで見せる!」


カウンターへ持っていき図書カードをピッ!


何だか前へ歩き出した。

これから私の、読書の旅が始まる。

小雨が降る中、車へ戻った。


しかし、前者は4週間かかり、後者は1ページで挫けて読まずに返却。道のり厳しいなぁ…意気込みだけではどうにもならず、地道にコツコツと頭の中で念仏のように唱えるのでした。

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