第5話西正樹の秘密

正樹が


部室に入ると、部員は光一だけだった。

「あれ?光一だけ?1年は?」

「模試だって」

「で、光一は何してんの?」

光一は袴を広げて、正座している。

「裾がほどけたから、縫い物」

「家で、お母さんに縫ってもらいなよ!」

光一は無視した。

「お前は女子か?」

その言葉には、光一が噛みついた。

「男が縫い物してたら、おかしいの?そんな、男が縫ってはいけないって法律があるの?」

普段とは間違う剣幕に、正樹は驚いた。

「すまん。オレが悪かったよ!」

素直に謝る。


光一は縫い物しながら、ポツリと溢した。

「キャプテンってさぁ~、今日の昼休み1年の郡山さんとナニしたでしょ?」

正樹は顔が赤くなる。

「な、何で~?オ、オレはEDだよ!」

「じゃ、何で、郡山さんがアンアン言ってたの?」

「光一、お前見てたのか?」

「うん。美術室の裏でイーゼル探してたら、キャプテンと郡山さんが入ってきたから、隠れたの。そしたら、そう言う事をヤリだして、こっそり見てた」


正樹は、自分の理性の無さを悔やんだが、もうお仕舞いだ。

「光一、黙っていてくれないか?」

「キャプテンには、いずみちゃんって、彼女いるもんね。ど~しよ~」

「黙っていてくれたら、このルアーあげる」

正樹はブラックバス釣り用の高価なルアーを光一に握らせた。

「これ、要らない」

「ま、まさかっ!金か?」

光一はクスリと笑い、

「僕にキスをしてっ!」

「えぇ~、何でよ」

「なら、いずみちゃんにリークしようかな?」

「わ、分かったよ」

「ちゃんと、唇ね」

「う、うん」

正樹は光一の唇にキスをした。

「キャプテンは、巨乳好きなんだからっ」

と、言いながら縫い物の続きを始めた。


正樹は、初めて男同士でキスをした。

女の子とは違う、唇の感触。

はっきり言って、戸惑いを隠せない。

取り敢えず着替えよう。バカ、忘れるんだ!オレ!と言い聞かせた。

すると、更衣室のドアが開いた。ヒロキであった。

「オッス、キャプテン」

「やあ、ヒロちゃん」

「で、光一君とのキスはどんな味がしたのかな」

正樹は血の気が引いていく。絶対にバレてはいけない行為を、よりによってヒロキにバレてしまったとは。

「光一とのキスは何かの罰ゲーム?」

「ま、まぁ、そんなもんだよ」

「じゃ、キャプテン、また光一とのキスを賭けてゲームをやろう」

「嫌だね」

「じゃ、1年にしゃべっちゃおっかな?」

「いいよ」

ヒロキは落胆した。

「キャプテン、もっと怯えてくれよ~」


どうやら、郡山との事はバレなくて済んだのが幸いだった。

しかし、光一って何でキスを求めたんだろ?

この日の夜、正樹は眠れなかった。

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