第129話

 そうだわ、婚約すれば、私の部屋にも招くことができるわ!私の部屋にもっと可愛い物を増やしましょう!

 子供っぽいと言われようが……ああそうだ。ファッションリーダーだと呼ばれ始めたことを利用したらどうかしら?

 大人だけでなく子供が喜ぶようなものを作りたいからと、童心に戻るためにとかなんとか言って。

 うん、そうしましょう。可愛い物しかない部屋にして……エミリーに来てもらうの。まって、侍女とかいたらエミリーも楽しめないわよね?じゃぁ、侍女を追い出して、2人きり……。

 カーっと頬が染まる。

 結婚前の男女が部屋で二人きりになんてなれるわけないじゃないのっ!

 いくら婚約していても、そんなはしたないこと、無理よ、無理っ。

 一人で青くなったり赤くなったりしている中、人々のざわめきが少し落ち着く。どうやら、陛下が次のお言葉を発する合図をしたようだ。

「皇太子の地位を捨てでも一緒になりたいと思っていた女性との婚約を、許そうと思う」

 へ?

 皇太子の地位を譲るんじゃなくて、婚約を許す?

 まって、どういうこと?

 私との婚約を陛下には反対されていたの?そんなことないわよね?いえ、どこの誰ともしれないんだったっけ。男爵令嬢かもしれないと思われていたなら反対もされていたかも。

 だけど、今挨拶して、私が公爵令嬢だというのは分かったはずだから、誤解は解けたよね?だったら……陛下にも言えば……。

 ん?別に言う必要もない?だって、許すって言ってるのを止める必要はないか?

「今日は祝勝会ではあるが、ここからは、シェミリオールの婚約披露パーティーを兼ねる」

 わーっと、会場が盛り上がりを見せる。

 ま、ま、まって。

 心の準備が出来てないよ。

 まずはお父様と陛下に認めていただいて、それから婚約披露パーティーにむけて最低でも3カ月は準備をしてと、そういうのを想像していのに、いきなり、婚約が認められ、そのまま披露されちゃうの?!

 いや。覚悟を決めなくちゃ。

 エミリーを見る。

 あれ?

 エミリーは、「大丈夫?リリーが無理そうならば……」と、ちょっとハラハラして私を見ているんじゃないかと思ったら、そんな顔をしているどころか相変わらず宙を見続けている。

 ……ちょっと寂しい。

 エミリー、私を見てくれないの?

 今日も可愛いドレスを着てきたのに。ああ、逆に可愛いっていう感情があふれすぎてバレないように見ないようにしてるのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る