第116話
「もちろん知っていますよ。伯爵令嬢エカテリーゼ様。ああ、家が傾きかけて多額の借金を負った伯爵家のとお付けいたしましょうか?」
「うちもいくらかお貸していたかと思いますわよ。公爵夫人となるのだから、すぐに返せるわと言っていらっしゃいましたがどうなるのでしょう?」
何を言われているのかは私のミミには届かないけれど、多くの貴族に囲まれるようにしてエカテリーゼ様は本来伯爵令嬢がいるべき場所まで連れていかれた。
それと入れ替わるように、次々と私とお兄様の元に多くの人が集まって来た。
「ロバート様、噂の天使を紹介していただいても?」
「リリーシャンヌ様は婚約もまだでありましたな、我が家には海外留学中の15になる息子がおりましてな」
「これは社交界に出さずに隠していたくもなるのが頷ける。流石にそろそろお相手を見つけようと?」
「ロバート、お前の言ってたこと本当だったんだな。天使って、本当に天使じゃないかっ」
お兄様が私の半歩前に出て、その全ての方のお相手をしてくださる。
流石に公爵令嬢だと分かっているので、ぶしつけに私に触れようとする者もいなければ、エスコートをしている相手を無視して直接私に話しかけようとする者もいない。
だけれども、エカテリーゼ様にお兄様が話をしていた時には遠巻きにしていた人たちとの距離が次第に近くなって来たため誰が原因か分からないけれど少し肌がぞわぞわしてきた。
このままでは鼻がムズムズして公爵令嬢らしからぬくしゃみをしてしまいそうだ。
いや、せっかく病弱設定があるのだからくしゃみが出たとしても少々具合が……で誤魔化せるだろうか。
……だめ。調子が悪いのなら休んだ方がいいと、会場から連れ出されたら、エミリーに会えなくなっちゃう。
くしゃみは絶えないと。あまりにアレルギーが酷くなってきたらお兄様の袖を2回引けばいい。あらかじめ合図をお兄様とは打ち合わせてある。
合図を送れば、お兄様はこの場を離れてくれる手はずになっている。
そろそろ鼻がむずむずしてきたと思った時、兄に合図を送る前にファンファーレが鳴った。
その音で、皆が背筋をただし、各々が暗黙の了解で定められた場所へと立ち、陛下の入場を待つ。
会場の一番奥、一段高くなった場所に椅子が並べられている。両陛下、そして本日の主役となるシェミリオール殿下が座る椅子だ。
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