第86話
そしてファッションリーダーとして盤石な地位も得られる。そうすれば、かかとが20センチもある靴だろうと流行らせることができる。
レース編みの男性とお揃いのブーケ・ド・コサージュも。爆発的に流行れば商品が品薄になる。
色々な花をとっかえひっかえ付け替えて使う。アクセサリーのようなものとなれば貴族であれば数を所持するようになる。
また、庶民にまで広がれば……。需用はますます増える。
レースの花の需用が増えれば、作り手も必要だ。……そう。
それは女性の仕事が増えると言うことだ。働き手を失い一人で子供を育てる女性の仕事が増える。
ローレル様と考え出した色々な編み図は、そういう人の手に渡るようにしたらどうだろう。許可のある者だけ製造販売できるとすれば……。
許可証は研修だとして編み方を覚える会に参加した者に与えようか。王妃なら、それくらいの我儘は通るはずだ。
ああでも、不器用な女性もいるだろう。不器用な女性ができる仕事……。そうだ、販売はどうだろう。ある商品の販売許可を出す。許可がない者は販売できないようにする……。でも、なぜそんな許可を出すか。
現状、許可がないと販売できない品はいくつかある。塩や酒だ。塩は国の管理下にある品で、誰かが買い占めたり不当に値を吊り上げないようにと許可のある業者が扱っている。酒も種類によって税金が違うため帳簿付けなどが難しいので許可が必要だ。まぁ脱税酒を密造している業者とのいたちごっこもあると言う話だけどね……。
ちゃんと理由があって許可のある店にだけ販売を許可する……。あ、ファッションリーダーになるならば「王妃御用達の店」という名誉だけでも助けになるのでは?その看板を上げる許可……うーん。
私なんかが務まるわけない……じゃない。
こんな私だからこそできることがある。
ああ、そうでしょう。
エミリー……。エミリーだからこそ、心が女であるエミリーだからできることもあるわよね。
私とエミリーが結婚することで、誰かを助けられるのよ。
私になんかなんて二度と思わない。私だから、私なりに、私にしかできないこと……。考えよう。
エミリーにも話をしてみよう。
「リリー様、朝ですわ」
はっ。
ローレル様に揺り起こされた。
昨日は色々と考えていて夜更かしをしてしまったから。
「ご、ごめんなさい。ちょっとあの、考え事をしていて寝過ごしてしまいましたわね。すぐに準備いたします」
きっと部屋の外から声をかけても起きなかったから心配して起しに来てくれたのね。
慌ててベッドから降りてローレル様のが呼び込んだ侍女に手伝ってもらいながら準備し、朝食をとって馬車に。
「ねぇ、リリー様。リリー様はどなたから婚約の打診を受けていらっしゃるのではなくて?」
唐突なローレル様の言葉に、ハッと思い出す。
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