第83話

「な、な、な、何で?」

 ビックリして尋ねると、アンナ様とハンナ様がふふっと笑った。

「皇太子殿下は見目麗しいですすね。性格も良く、賢い。欠点がない素晴らしい方だと思うでしょう?」

 コクコクと頷く。

 まさか、女性っぽい部分がバレている?とか……?

「その欠点がなさそうなのが好きになれないんですって!」

 アンナ様の言葉に、ローレル様の顔を見る。

「そうなの。なんていうの、ちょっと愛嬌があるというか、情けない部分があって、思わず私がしっかりして支えてあげなきゃ!って思うような男性の方が好きなのよね……」

 え……?

「なんていうのかしら。どことなぁく、殿下って、私と同じ匂いがするのよね……。似てる気がして。ライバル的な存在にはなれても、心許せる相手には慣れそうにないっていうか……」

 表の顔……でなく、エミリーとローレル様二人が一緒にいるところを想像してみる。

「リリー、こちらのお菓子おいしいわよ」

「リリー様、甘いものを食べ過ぎるのは体に毒ですわ。フルーツにした方がいいと思います」

「たまにならいいわよ!それにリリーは太っても可愛いんだから問題ないわ!」

「あら、太るとどれほど大変なのか、コルセットも締めたことのない貴方に分かる?」

「きーっ!コルセットを締めたことがあるからって、勝ち誇らないで頂戴!」

 きゃーっ!喧嘩はやめてぇ!

 脳内で喧嘩を始めてしまったローレル様とエミリーの二人に青くなる。

 ライバルか。うん、なんか……分かるような気もする。

「私はね、ふっくらした男性が好みなの。食べ物を美味しくもりもり食べる方。一緒に世界中のおいしい物を食べましょうって言えるような方がいたらいいなぁと」

「私は、少し年の離れた大人の男性がいいのですわ。10歳は離れているといいなぁと思っていますの」

 うわぁ。そうなんだ。

 皆エミリー……いえ、エミリオみたいな男性が好きだと思っていたけれど……そうじゃないんだ。

「で、リリー様はどんな男性が好みなの?」

「え?わ、私?」

 好きな男性のタイプ?

「か、考えたことも、なかった……」

 アレルギーがあるから、男性には一生近づかないと思っていたから。

「学園にも舞踏会にも通っていないと、色々な男性を見る機会も少ないですし、まだ分からないわよね」

 ローレル様がフォローの言葉を入れてくれる。

 好きな男性のタイプ……。

 頭に浮かんでいるのはエミリオの姿。だけど、ダメダメ。「私を男として見てるの?酷いわ!どっからどう見ても女でしょ!……は、無理があるわよね……リリーごめんなさい。私、女だから、貴方の気持ちに答えることはできないわ……」

 というエミリーの姿も思い浮かぶ。

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