第71話
お世継ぎのことを考えたら、エミリーが王位を継ぐのは無理なのよね。無理というか、王としての務めの一つはお世継ぎを残すことだもの。
心が女のエミリーには絶対無理なことだ。まぁ、在位中にお子が生まれない王もいる。
そう言う場合でも、王位継承権は誰が何番目といったように決まっているから、王子が生まれないイコール王家が途絶えるというわけではないのだけれど。
必ずしも、お世継ぎを残す必要があるというわけでもないといえばないんだけれど。生涯独身で通した王なんていうのも他国にはいたはずだ。
……。
ガバリと布団を跳ね上げ、上半身を起こす。
「何も問題がないんじゃないかしら?」
皇太子殿下が、宰相の娘である公爵令嬢と婚約を結ぶ。
表向きはそれだけのことよね?
どこの誰が反対するというの?
ふと、エカテリーゼ様の顔が思い浮かんだ。仮病を使って人の気を引くような女に皇太子妃なんて務まるはずありませんわ!と言いそうだ。
「仮病じゃないんだけどなぁ……」
言えない。男性アレルギーなんて。
そんな人間が皇太子妃になるなんてそこれこそ国の恥だと。反対されるだろう。
「仮病……、むしろ、仮病を使ったらどうかしら?」
私が、エミリーと婚約する。私とエミリーがラブラブなのを世間に見せつける。
私が病弱だという場面を見せる。……アレルギー以外は健康体なので、これは仮病ね。
皇太子妃、後の王妃として相応しくないといわれる。でもエミリーは私と別れたくない。
皇太子の位を弟に譲って、エミリーと私は田舎でひっそりと暮らす。
こういうラブロマンス、世の中好きよね?
うち、公爵家で力もあるから、王家としても、別れさせ、公爵家と仲たがいするわけにはいかないとかなんとか言って、弟殿下に皇太子の位をすんなり譲れるんじゃない?
「ああ、そうよ!完璧じゃない?」
私、公爵令嬢でよかった!
お父様が宰相で良かった!
エミリーと婚約できるわ!
エミリーと好きなだけ一緒にいられるんだわ!
お父様はきっとビックリなさるわよね。エミリーと婚約したいって言ったら。だって、皇太子殿下と婚約したいなんて突然言う人間がいる?
言っても普通は叶うような話じゃないもの。だけど、皇太子殿下とも話がついてるとか言ったら、驚くわよね。ふふふ。
ああ、戦争が終わって早くエミリーが帰ってこないかしら。
戦争……大丈夫よね。皇太子なら、一番安全が確保されているだろうし。
それに、お父様も、心配ないと言っていたし。
……。
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