強者を求めて南東へ

 ガチサイコに捕まったイグニスには諦めてもらうしかない。


「まあ、イグニスさんは悪いことしようとしたので、その代償としてこうなっているのだと納得してもらうしかないです」

「ぅぅ……永遠にこの家のなか、こんなウサ耳をつけてなんて……」

「あっ、そうだ! なにか強者の情報とかもってませんか?」


 気まずさを誤魔化そう思案していると、ひらめきを得た。

 イグニスは火教の代行者であり、教会内でも高い地位にいた。


 いろんな土地に足を運んでいたはずだ。

 であるならば、彼女のもとに集まっている情報力は期待できる。


 強者の情報を求めれば、戦闘能力の高い南極遠征隊残留者たちの手がかりを掴めるかもしれない。

 

「強者の情報? そんなものを知ってどうするのですか」

「俺より強い奴に会いに行くんですよ(適当)」

「強者を屈服させることを至上の喜びとしていると」


 ちょっと曲解されちゃってるが。


「強者といえば、南東の海のほうに応援要請が出ていましたね」

「南東の海?」

「火教の代行者、中でも私まで呼びかけるのは相当な武力を要する事案ということ。私はその頃にはすでにノウと文通をしていて、ミズカドレカに特別な精霊がいることを知ってましたから、先にこっちに来たのですが……思えば、日頃の行いのせいなのかもしれないですね……火の導きを外れたからこんなところパクパクされたのでしょうか……」


 再びずーんっと落ちこむイグニスをよそに、ラビが開いてくれた世界地図を見やる。南東の海。俺たちの調査した範囲よりずっと遠い場所だ。


 イグニスの推論は的を射ている。

 強者に対処するために、応援要請をする。

 であるならば、現在、南東の海近郊では、火教が最強戦力を呼びつけるほどの事態がおこっていると考えることができる。南極遠征隊のだれかがそこでトラブルを起こしているのかもしれない。定かではないが、行ってみる価値はある。


「ご主人様、まさかそんな遠くまでいくつもりですか」

「まあ、行かないと捜索できないので」


 ラビの瞳から光が失われ、澱んでいく。あっ、まっずい。


「私を捨てていくのですね」

「いや、まさか、ラビさんは大事な存在です。本当です。可能ならこの家から離れたくないですし、家を持っていけたらいいなとか思ってますけど、流石に屋敷サイズは『超捕獲家』でもしまっちゃうおじさんできなかったというか」


 しまっちゃうおじさんにも限界はあります。デカい岩石とか、2トントラックくらいなら頑張れるけど、それ以上はちょっと無理っぽい。


「わかりました。では、ともに参りましょう」

「わかってくれましたか…………ん?」

「私はイグニスを食べて力をつけました。成長した私のチカラを披露する時がきたようですね。はぁ〜……ラビットマジック!」


 キリッとした顔でラビは大きく手を広げた。

 ラビットエネルギーが満ちていくのを感じる。知らんけど。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ━━━━


 凄まじい物音が響き渡りはじめた。

 振動は勢いをまし、シャンデリアが波打つ。

 窓がガタガタなって、食器がカカカカっと音を鳴らす。


 これは、この振動は、まさか屋敷が、動いている……?


「お父さん、あれ」


 レヴィの指差す窓のそと。景色が変わっていく。

 お隣さんの家がどんどん下へさがっていくように見える。


 いや、違う。

 お隣さんが下がってるんじゃなくて、この屋敷が上に移動しているんだ。


 俺は玄関を飛びだし、門を開け放ち、表通りに飛び降りた。

 ふりかえって巨大な影を見あげた。信じられん。


「そんな、ばかな!」


 俺の屋敷が、敷地ごと持ちあがっていた。

 下方へ生える4本の巨大な腕が支えている持ちあげているのだ。

 フォルムが人間の腕っぽいせいで絵面が怖くなりすぎてる。


「きゃああ!」

「フィンガーマンの屋敷から手足が生えてるぞ!」

「フィンガーマンめ、今度は一体なにをおっぱじめようってんだ!?」


 俺じゃないっつーの。

 












 





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こんにちは

ファンタスティックです


サポートいつもありがとうございます。

デイリーミッション関連の近況ノートを更新しましたので報告しておきます。

今回は異世界ハッピーさん、その4です。ハッピーさんもハッピーさんで試練を乗り越え、冒険をはじめようとしているようです。




過去の設定資料・短編小説は下にまとめておきました。


───短編小説


短編小説『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』

  ──『シマエナガさんと四つ目の結末』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16816927861073643882


短編小説『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』

  ──『絶滅の戦争とちいさな勇者』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817330651294695033


短編小説『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』

  ──『魔導のアルコンダンジョン編、トリガーハッピー視点 その1』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817330654157915234


短編小説『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』

  ──『魔導のアルコンダンジョン編、トリガーハッピー視点、その2』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817330655942334563


短編小説『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』

  ──『魔導のアルコンダンジョン編、トリガーハッピー視点、その3』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817330657826549939


短編小説『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』

  ──『魔導のアルコンダンジョン編、トリガーハッピー視点、その4』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817330659087760669


───設定資料


『ダンジョン財団について その1』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16816927863203083521


『探索者』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817139554640586146


『7つの指輪』『クトルニアの指輪』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817139555399515817


『魔法剣』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817139555884073697


『魔法銃』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817139556406527142


『魔導の遺した世界 アズライラの地の地図 第一版』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817139558740939693


『魔導の遺した世界 アズライラの地の地図 第二版』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817139559147250204


『魔導の遺した世界 アズライラの地の地図 第三版』

https://kakuyomu.jp/users/ytki0920/news/16817330649340114339

 

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