確率の時間 コイン
夜になり、ホテルへ帰って来ました。
シャワーをあびて、ベッドに飛びこみ、ピザを頼みます。買い置きして、冷蔵庫で冷やしておいたコークをプシュっと開けて豪遊します。
お菓子と炭酸飲料があって、健康があり、動画を見れて、ゲームができれば、もうそれは完成された幸せなんじゃないだろうか。一攫千金を目指している俺が言うのもなんだが……。群馬に来てからピザしか食べてない俺が健康を語るのはおこがましいのだが……。
ピザのチーズをビヨーンと伸ばして食べながら、ラインをチェックする。
兄貴からは「
我が愚昧からは「もう帰ってこない? 押し入れ使いたいから、お兄ちゃんの部屋物置にするけどいいよね」と、お兄ちゃんつらたん。
とりあえず俺の部屋を守るために賄賂を送る。「お金あげる」と1000円のお小遣いをペイで送ってあげといた。なんて優しい兄なのだろう。
返信:「少な!」
泣きたい。
いつから、うちの妹はこんなになってしまったのだ。
返信:「物置にはしないであげる。執行猶予10日」
たぶん、10日は待ってくれるということだろう。そして、執行猶予の使い方間違えてるあたり、やはり我が妹の愚か具合が滲みでてる。
俺は「兄貴の部屋使えよ」と返信しておいた。
我が父からは借用書の写真が送り付けられてきた。
法的に効力を持っている。無言の圧力だ。
口座に20万円を送金して、借金を返しておく。
─────────────────
ダンジョン銀行口座残高 156,069円
─────────────────
返信:「スタンプ」
ペンギンが「Good」って言ってる謎スタンプ。親父の愛用だ。
返信:「順調か!(^^)!」
おや、我が父上にしては珍しく俺の心配をしてくれてるのか。
返信:「103万超えそうか( ^)o(^ )」
どうやら、俺ではなく税金の心配をしていたようだ。
「今までありがとうございました」:返信
「扶養からは外れます」
返信:「わかった( ^^) _U~~」
「食ってけるなら、それでいい(*^▽^*)
「スタンプ(ペンギン)」
なんだか胸がジーンとしますね。
親父は無愛想だし、ハゲてるし、デブだし、顔文字うざいし、週末はずっと快活クラブいってるけど、今にして思えば、よくここまで育ててくれたと思う。ありがとな、おや──
返信:「最悪、兄はお前に託す(*´ω`*)」
「スタンプ(ペンギン)」
「それは無理」:返信
自分の子供は最後まで見てやってください。
家族との心温まるラインを終えて、ゆっくり湯につかり疲れを癒し、動画を見ながら寝落ちしました。
翌朝。
──────────────────
★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『確率の時間 コイン』
コイントスで10連続表を出す 0/10
継続日数:12日目
コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍
──────────────────
少し毛色が変わったミッションだ。
10回ね。案外すぐ終わったりしてな。
500円玉でコイントスする。
1回、2回、連続で表だ。
おお、楽勝じゃん。そう思ったのも束の間。
本当の地獄の始まりはここからだった。
──2時間後
終わらん。
まずい。本当にまずい気がしてきた。
横で動画を流しながら、この2時間ずっと投げてるけど、まったく進捗状況が変わっていない。
これが確率の壁だと言うのか。
一向に終わる気配がしないので、いったい自分がどんな確率に挑んでいるのかを調べてみたところ、どうやら0.097%という敵と戦ってたらしい。
「……」
沈黙するほかない。
これまで何とかデイリーをこなして来たけど、これは流石に不可能なんじゃなかろうか……。
「……やるだけ、やってみるか」
長期戦になる事を覚悟した。
今年の春アニメで見ていなかった物を、まとめて流しながら、コイントスを繰りかえす。
──10時間後
終わらんッッッッッッ!!!!!!
不可能ですッッッッ!!!!!
「これは無理かなぁ……」
俺は頭を抱えてベッドに横になった。
俺のデイリー生活、ここまでだったかもしれん。
このデイリー、完全に来た時点で諦めなくちゃいけないやつだ。
今回は本気で継続をリセットさせようとして来てる。
どうせデイリーミッション考えてる奴は「確率系のデイリーあったらおもろいやろ。そうやな、とりあえず5回、でも、なんか少ない気がするし、10回くらいでええやろ!」みたいなノリでこの数字を選んでるに違いない。
どうにかインチキ出来ないのか。
現代っ子らしく電子の海に飛び込んで、情報を探す。
すると、どうやら、コインの裏表をコントロールする術があるらしいとわかった。
「そうか! 両方とも表のコインを使えばいいのか! 頭いいな!」
さっそく10回やってみた。
──────────────────
★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『確率の時間 コイン』
コイントスで10連続表を出す 0/10
継続日数:12日目
コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍
──────────────────
ダメじゃねーかよ。
誰だよ、この雑魚いイカサマ考えた奴。
次はマジシャンの手法をまねることにした。
なになに、回転するコインを見て、出したい面がうえになるようにキャッチ?
出来るのそんなこと?
「あ」
見える。
注意すれば見える。
昔、兄貴が言っていた。
「英雄見てろよ、これが
俺の兄貴は高速で回転するスロットを、自分の好きな柄で止められるという超能力の持ち主だった。最初見たときはビビったが、どうにもスロットカスはだいたい目押しができるらしい。というか目押しができて初めてスロットが始まるらしい。
「へへ、っていうことで、2万だけ! 2万だけ貸してくんね!」
断ってへらへらした顔面にワンパンを打ちこんだのはいい思い出だ。
「この世界には信じられないような技がある……俺はそれを知っている」
Web記事には「回転数を身体で覚えれば目で見なくてもいけます」と流石に嘘だろって感じに書かれていた。でも、たぶん本当だ。
俺は目をがん開きして、コインの表を選んで手の甲に落として、うえから押さえた。
それでもちゃんとデイリーにはカウントされていた。
──────────────────
★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『確率の時間 コイン』
コイントスで10連続表を出す 5/10
継続日数:12日目
コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍
──────────────────
よし、ここまで来た!
ミスることも多いが、意図的に表を選べるのとでは、難易度がまるで違う。
500円玉だと見にくいので、片面をマジックの黒で塗りつぶす。
俺って頭いい~!
──────────────────
★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『確率の時間 コイン』
コイントスで10連続表を出す 0/10
継続日数:12日目
コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍
─────────────────
なんだよ!
それはインチキ判定なのかよ!
サイレントレギュレーションに引っかかったらしい。
デイリーくん、コインへの細工あたりには厳しいようだ。
──午後10時
──────────────────
★デイリーミッション★
毎日コツコツ頑張ろうっ!
『確率の時間 コイン』
コイントスで10連続表を出す 10/10
★本日のデイリーミッション達成っ!★
報酬 先人の知恵B ×2(50,000経験値)
経験値 5,000
スキル栄養剤C ×2 (10,000スキル経験値)
継続日数:13日目
コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍
──────────────────
あ゛あ゛あ゛お゛わ゛っ゛た゛ぁぁあーッ!
このデイリーやば。
結果的にコインの表と裏を見極める、ある意味″実力で攻略″した。
確率に頼ってたら、本当に1日じゃ終わらなかったと思う。
レベルアップして反射神経やら、視力やら、生物としての機能が向上してたから、俺みたいな素人でも、なんとかなったけど……。
これは練習しておかないとまずい。
次にこのデイリーが来た時に死ぬ。
そして、エクスカリバーと同じく、その2とか出されたら、だぶん詰みだ。
この日から、俺はコインを持ち歩き、いつでも自分の好きな面を出せるように練習をすることになった。
ちなみに先人の知恵B×2はすぐに使って、レベルアップしてしまいました。
俺はもうレベルアップ無しでは生きられない。
24時間レベルアップなしだと、禁断症状が始まってしまうのだ。
「イヒヒ、レベルアップ、レベル、アップアップっ、うっへへ」
──────────────────
赤木英雄
レベル65
HP 1905/1905
MP 400/400
スキル
『フィンガースナップ Lv3』
装備品
『蒼い血』
『選ばれし者の証』
『秘密の地図』
──────────────────
明日はダンジョンに行きたいなぁ(白い目)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます