Dランク探索者


 一夜明けて、初投稿をニヤニヤしながら確認します。


 拡散:1 いいね!:4


「まあ、最初はこんなもんよね」


 か、悲しくなんかないもん。じ、実は超バズってる夢とか見てないもん。

 期待してなかったもん。だから、落胆なんかしないもん。


 さて、では、今日も元気にデイリーミッションを確認しましょうかね。……はぁ。


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  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

  『日刊筋トレ:腕立て伏せ』


 腕立て伏せ 0/300回


 継続日数:6日目 

 コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍

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 ほう、いいじゃないか。

 こういうのでいいんだよ、こういうので。

 デイリーらしい。実に健全だ。

 まあ、300回って全然軽くはないんだけどさ。


 俺は顔を洗って、SNS確認して、ライン返して、財団SNS確認して、ソシャゲいじって、筋トレに着手する。

 

 30分後。


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 ★デイリーミッション★

 毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『日刊筋トレ:腕立て伏せ』


 腕立て伏せ 300/300回

  

 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 経験値5,000


 継続日数:7日目 

 コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍

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 休み休みやったが、かなり余裕でクリアできた。

 以前の俺だと、たぶん10回目で死んでただろう。

 生物として肉体強度が高くなっている。

 レベルアップはかくも偉大だな。


 日課をクリアして、午前8時。

 さっそく俺はダンジョンキャンプへ向かった。

 今日も、かあいい修羅道さんを見つけたので、昨晩聞き逃がした異常物質アノマリーについて聞いてみることにした。


「え? もう三つも異常物質見つけたんですか?」

「『蒼い血』と『選ばれし者の証』と『秘密の地図』です」

「どれも聞いたことない異常物質アノマリーです……データベースで前例を検索してみますね!」


 修羅道さんは自分のスマホを見つめ「発掘数はゼロですね」と結論をだした。


異常物質アノマリーは一点物しかない、というわけじゃないんですが、まったく同じアイテムはあまり手に入らないんですよ! 必ずちょっと違ったり、性能の差があったり、ですね。なので、探索者の方は、異常物質アノマリーとの出会いを大事にするんですよ!」

 

 ただ、ひとつ言えることは、俺が異常物質アノマリーを見つけすぎなことだという。


「先天的にダンジョン因子が強い人は運命を引き寄せるチカラがあるといいます。もしかしたら、赤木さんは将来すごい探索者になっているのかもしれないですね!」


 修羅道さんに持ち上げられてしまいました。

 まあ、正直、己惚れることではないよな。

 こればっかりは運としかいいようがないだろうから。

 下ばかり見て歩いているから、異常物質アノマリーと出会っただけだ。


 その後、俺はダンジョンへ突入し『フィンガースナップ Lv2』でモンスターを倒し、経験値を手に入れ、たまにドロップするクリスタルを拾った。

 『秘密の地図』を開いて、モンスターの頻出地域を撮影。その際、ダンジョンの入り口の近くの狩場を選んで投稿しておく。

 俺が狩るのはもっと奥の方の狩場だ。


 狩場では、だいたい5分に一体はエンカウントする。

 それ以外の場所だと、15分~以上なにも収穫がないことも多い。

 狩場をさまようことはそれだけ効率がアップするのである。


 基本は三階層で階段を見つけつつ、狩場を転々とするというフォーメンションだ。

 一個の狩場で20回くらいモンスターを倒すと、危険エリアではなくなる=モンスターの密度が下がるので、20回倒したら、次の狩場だ。


 レベルアップの音が時折聞きこえる。

 ちゃんと自分が成長出来ている気がして嬉しい。

 だが、確実にピコン! の頻度は下がってる。

 もう3,4時間に一回しか聞こえない。


 体力的に余裕があるので、徹夜で潜った。

 24時間以上もぐっても、へっちゃらだった。

 正直いうと、ホテルに帰っても、全然疲れていないので、ぐっすりと眠れない日が続いていた。


 スマホの時計では、すでにお昼だが、いけるところまで行こうと思った。


 ただ、そのまえにデイリーをチェックだ。


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  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『カンフーマスターの教え』


 ジャケットを着る  0/100

 ジャケットを脱ぐ  0/100

 ジャケットを投げる 0/100

 ジャケットを拾う  0/100


 継続日数:7日目 

 コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍

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 おっけい。それね。


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  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『カンフーマスターの教え』


 ジャケットを着る  100/100

 ジャケットを脱ぐ  100/100

 ジャケットを投げる 100/100

 ジャケットを拾う  100/100


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 1,000経験値


 継続日数:8日目 

 コツコツランク:シルバー 倍率2.5倍

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 10分くらいでサクッと終わらせました。

 

 狩場周回へ戻ります。


 そうして、気がつけば、俺はいつしか3階層で48時間以上過ごしていた。

 流石になにかやばい気がしてきた。

 いや、体力的には大丈夫だし、HPもMPもまだ余りあるけどさ。

 

 外へ出るため、ダンジョン二階層まで戻った。


 三階層と二階層を繫ぐ階段に腰かけて、投稿を確認する。

 投稿生活三日目だ。

 

 昨日の投稿は、拡散:5 いいね!:25とかなり成長していた。

 ちょっと嬉しくなっちゃいます。これが承認欲求を満たされるということでしょうか。


 ダンジョンの入り口近くの狩場を教えてあげると「仕事帰りにちょっとダンジョン潜ろうかな……でも、時間がたくさんあるわけじゃないんだよなぁ」というリーマン探索者たちに、有益な情報となる。

 リーマンだけに限らず、副業で探索者をやってる人たちは、そもそも普段の生活があるので、週末くらいしかガッツリ潜れない。

 つまり、手軽にサクッとダンジョンしたいのに、そもそもダンジョンと言う世界が、専業さんしか受け入れてくれないのである。


 俺はそんな彼らの救世主メシアになれる。


 見つけたかもしれない。

 俺だけにしか発信できない情報とやらを。

 修羅道さんはこのことを知っていて、あえてヒントを出し、俺を導いたのか。

 流石は群馬でもっとも恐れられる食人族の酋長の娘だ。武闘派で受付嬢で、さらに賢者ポジションも押さえているとは。脱帽である。


 というわけで、この路線で行こうと思い、俺は『秘密の地図』で一階層の入り口近くの狩場を撮影して、財団アプリの立体マップと同期させ、タイムラインにあげておいた。

 添える一言は「今日の狩場」だ。

 面白い感じの投稿は苦手なのだ。すべったらどうしようとか思っちゃうもんね。


 バッグがずっしりとしている。

 そして、たぶん俺のせいだろうが、三階層から狩場が消失した。

 モンスターも無限というわけではないらしい。

 もしかして、全滅させてしまっただろうか……。


 ちょっと申し訳ない気持ちになりつつ、キャンプまで戻って来た。

 流石に疲れたが、まあ、ホテルに戻るまでは耐えられそうだ。

 

「あ、赤木さん……数日見ないと思ったら……もしかして、ずっと潜ってました?」


 俺はずっしり重たくなった肩掛けバッグをカウンターに置いた。


「ええ……これはもう上位の探索者のなかでも修行僧みたいな人がたまにもってくるタイプのクリスタルの出し方じゃないですかぁ……ていうか、バッグ伸びちゃいますよ、こんなパンパンにしたら!」


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 今日の査定

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 小さなクリスタル 1,109円

 小さなクリスタル 1,941円

 小さなクリスタル 2,187円

 小さなクリスタル 2,101円

 小さなクリスタル 2,093円

 小さなクリスタル 2,215円

 小さなクリスタル 2,109円

 小さなクリスタル 2,440円

 小さなクリスタル 2,110円

 小さなクリスタル 2,101円

 小さなクリスタル 2,601円

 小さなクリスタル 1,986円

 小さなクリスタル 2,101円

 小さなクリスタル 2,007円

 小さなクリスタル 2,242円

 小さなクリスタル 1,536円

 小さなクリスタル 1,972円

 小さなクリスタル 2,106円

 小さなクリスタル 2,175円

 小さなクリスタル 2,110円

 小さなクリスタル 2,101円

 小さなクリスタル 2,601円

 小さなクリスタル 2,334円

 小さなクリスタル 2,096円

 小さなクリスタル 2,609円

 小さなクリスタル 2,000円

 小さなクリスタル 2,101円

 クリスタル 4,869円

 クリスタル 4,963円

 クリスタル 5,200円

 クリスタル 5,193円

 クリスタル 5,471円

 クリスタル 6,120円

 クリスタル 5,005円

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 合計 93,905円


 ダンジョン銀行口座残高 152,350円

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 最高に気持ちがいいです。

 牛丼チェーン店やパチンコ店でアルバイトしていた時より心が満たされている気がします。すごく楽しい。うん、楽しいが一番だな。

 この楽しさで、かつ50時間潜って毎回この稼ぎなら嬉しい。

 だけど、これはおそらくピークなんだろう。

 もう三階層にはモンスターはいない。

 同じような狩りをしても、次の50時間の収入は大きく減るだろう。

 そして、ダンジョンはいつでも潜れるわけじゃない。

 このクラス3が攻略されたら、次のダンジョンがでるまで、仕事がないのだ。

 そう考えると、諸手をあげて喜ぶにはまだ早いように思えた。


 ちなみに、レベルは結構あがりました。


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 赤木英雄

 レベル52

 HP 451/1,023

 MP 25/245


 スキル

 『フィンガースナップ Lv2』


 装備品

 『蒼い血』

 『選ばれし者の証』

 『秘密の地図』


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「赤木さん、財団からプレゼントがありますよ!」


 修羅道さんにDランクと刻まれた黄色い宝石のついたブローチを渡された。

 艶消しが施された黒箱に入っていた。

 高級感のある布地の内装で、宝石鑑定書が入っていた。

 話を聞くに、案の定、支給品にしては、それなりいい値段のする物品だと言う、

 ステンレス合金製の型にトパーズがあしらわれているらしい。SDGsに気を配っているあたり、なるほど財団の社会派ぶりが見て取れる。


「Dランク探索者昇級おめでとうございます! これで世界の探索者の上位40%入りですね! もう新人とは呼べないベテランさんですね!」


 どうやら、E→Dの壁でおおくの探索者はふるいにかけられるようだ。

 無事、ひとつの壁を越えられたことを喜ぼう。


 Eランクのブローチを修羅道さんへ返還する。

 こうして俺は晴れてDランク探索者となった。

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